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「大手企業じゃないから、サイバー攻撃なんて関係ない」、そう思っていませんか?実は、その考えが一番危険なのです。
2025年に入ってからも、中小企業を狙ったサイバー攻撃は増加の一途をたどっています。経済産業省が2025年2月に発表した最新調査では、中小企業の約30%が過去にサイバー攻撃を受けた経験があり、そのうち約7割で取引先にまで被害が及ぶ「サイバードミノ」が発生していることが明らかになりました。
この記事では、2025年に急増している中小企業を狙った最新のサイバー攻撃手口と、ITが苦手な経営者でも今日から実践できる対策をわかりやすく解説します。
2025年に急増!中小企業を狙う最新サイバー攻撃の実態
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が2025年2月に公表した「2024年度中小企業等実態調査」によると、サイバー攻撃による被害は想像以上に深刻です。2023年度にサイバーインシデントの被害を受けた中小企業の被害額は 平均73万円、最悪のケースでは 1億円に達した事例も報告されています。
さらに驚くべきことに、復旧までにかかった期間は 平均5.8日、最長で360日(約1年)を要した企業もありました。これは単なる金銭的損失だけでなく、事業継続そのものが脅かされる深刻な事態を意味しています。
警察庁が2025年3月に発表した「令和6年におけるサイバー空間をめぐる脅威情勢等について」では、2024年の中小企業のランサムウェア被害件数が2023年より37%増加したことが報告されています。特に注目すべきは、ランサムウェア被害企業の約6割が中小企業という事実です。
なぜ中小企業が標的になるのか?攻撃者の3つの狙い
「なぜ大手企業ではなく、中小企業が狙われるのか?」多くの経営者がそう疑問に思うでしょう。実は、攻撃者にとって中小企業は 「格好のターゲット」なのです。
狙い1セキュリティ対策の甘さ
大手企業は高額なセキュリティシステムを導入し、専任の情報セキュリティ担当者を配置しています。一方、中小企業では「費用がかかりすぎる」「専門知識を持つ人材がいない」といった理由で、基本的な対策すら十分でないケースが少なくありません。IPAの調査では、約7割の中小企業において組織的なセキュリティ体制が整備されていないことが判明しています。
狙い2大手企業への「踏み台」として利用
最も深刻なのは、中小企業を経由して大手企業を攻撃する 「サプライチェーン攻撃」です。取引先やグループ会社等を経由した侵入が、全体の19.8%を占めるという調査結果もあります。中小企業が攻撃を受けると、取引先にまで被害が及ぶ「サイバードミノ」が発生してしまいます。
狙い3発覚しにくく、対応が遅れがち
中小企業では、サイバー攻撃を受けても気付くのが遅れがちです。専門知識を持つIT担当者がいない場合、異常な動作を「パソコンの調子が悪い」程度に考えてしまい、対応が後手に回ることがあります。実際に、過去3期内で10回以上のサイバーインシデント被害に遭った企業が1.7%存在するという驚くべきデータもあります。
【2025年版】中小企業を狙う最新サイバー攻撃5選
2025年に入って特に被害が急増している5つの攻撃手口を、実際の事例をもとにした想定事例とともにご紹介します。
攻撃1生成AIを悪用したフィッシング詐欺
2025年の大きな特徴は、ChatGPTなどの生成AIを悪用した、これまでにないほど巧妙な フィッシング詐欺の登場です。従来のフィッシングメールは日本語が不自然だったり、明らかに怪しい内容だったりして見分けがつきやすいものでした。しかし、生成AIで作成されたフィッシングメールは、取引先の文体や口調を完璧に模倣し、実際の業務内容に関連した内容で送られてくるため、見分けることが非常に困難になっています。
実際の事例として、製造業のA社では、長年取引のある部品メーカーからと思われる「新しい決済システムへの移行」を案内するメールが届きました。メールの文面は普段のやり取りと全く同じ口調で、添付されたPDFファイルも本物そっくりでした。しかし、そのメールは生成AIで作成された偽物で、PDFを開いたことでマルウェアに感染し、顧客データベースへの不正アクセスを許してしまいました。
攻撃2ランサムウェアの二重脅迫
ランサムウェアとは、パソコンやサーバーのデータを暗号化して使用不能にし、復旧と引き換えに身代金を要求するマルウェアです。2025年のランサムウェアは従来の「データ暗号化」に加えて 「情報の盗取・公開脅迫」という二重の脅迫を行うのが主流になっています。建設業のB社では、社内のパソコンが一斉に使用不能になっただけでなく、攻撃者から「顧客の設計図面と財務情報を盗取した。身代金を支払わなければインターネット上に公開する」という脅迫を受け、最終的に約500万円の被害となりました。
攻撃3BEC(ビジネスメール詐欺)の高度化
BEC(Business Email Compromise)とは、経営者や取引先になりすまして従業員をだまし、送金を指示する詐欺手法です。2025年のBECは、事前に長期間にわたってメールのやり取りを監視し、社内の人間関係や業務フローを詳細に把握してから実行されるため、非常に発見が困難になっています。卸売業の企業では、海外出張中の社長になりすました犯人から「緊急の海外送金が必要」というメールが届き、疑いを持たなかった経理担当者が指示通りに送金した結果、 約800万円をだまし取られました。
攻撃4テレワーク環境を狙った侵入
テレワークの普及に伴い、自宅などの社外からの業務アクセスを狙った攻撃が急増しています。家庭用のWi-Fiルーターのセキュリティ設定が甘い場合や、社員の私用パソコンが会社のシステムにアクセスできる環境では、攻撃者の侵入経路となってしまいます。サービス業の企業では、Wi-Fiルーターの脆弱性を突かれて社内ネットワークに侵入され、最終的に顧客の個人情報約3,000件を窃取され、総被害額は 約1,200万円に達しました。

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攻撃5サプライチェーン攻撃による連鎖被害
サプライチェーン攻撃とは、直接的な標的ではなく、その取引先や関連企業を経由して本命の企業を攻撃する手法です。中小企業が最初の侵入点として狙われ、そこから大手企業へと攻撃が拡大していきます。システム開発の企業では、自社のサーバーが攻撃を受けて開発中のソフトウェアに不正なプログラムが埋め込まれ、最終的に約50社が影響を受ける大規模なインシデントとなり、損害賠償請求により事業縮小を余儀なくされました。
今すぐできる!中小企業向けサイバー攻撃対策5選
これらの脅威に対して、中小企業でも今日から実践できる効果的な対策をご紹介します。経済産業省やIPAのガイドラインに基づく、実証済みの対策方法です。
対策1:多要素認証(2FA)の導入
パスワードだけでなく、スマートフォンアプリやSMSによる認証コードを組み合わせる 多要素認証は、不正アクセスを大幅に減らす効果があります。たとえパスワードが漏えいしても、第2の認証要素がなければシステムにアクセスできないため、攻撃者の侵入を防ぐことができます。Google Workspace、Microsoft 365、Slack、Chatworkなど、多くのクラウドサービスで利用でき、月額数百円から始められます。
対策2:定期的なバックアップとテスト復元
ランサムウェア攻撃を受けてデータが暗号化されても、適切なバックアップがあれば身代金を支払うことなく業務を復旧できます。重要なのは、単にバックアップを取るだけでなく、 定期的に復元テストを行うことです。バックアップの基本原則は 「3-2-1ルール」です。重要なデータは3つの場所に保存し、そのうち2つは異なる媒体(クラウドとローカル等)に、1つは物理的に離れた場所(クラウドサービス等)に保存します。
対策3:従業員向けセキュリティ教育の実施
サイバー攻撃の多くは、従業員の「うっかり」から始まります。効果的な従業員教育のポイントは、年1回の座学研修だけでなく、 月1回程度の短時間学習を継続することです。最新の攻撃手法やフィッシングメールの事例を共有し、「自分たちにも起こりうる身近な脅威」として認識してもらうことが重要です。模擬フィッシングメールを社内に送信する「フィッシング訓練」も効果的な対策の一つです。
対策4:ネットワークの分離と監視
社内ネットワークを業務用と来客用に分離し、重要なデータにアクセスできる範囲を限定することで、万が一の侵入時でも被害を最小限に抑えることができます。UTM(統合脅威管理)機器の導入により、不審な通信を自動的に検知・遮断することが可能です。中小企業向けのUTMは月額1万円程度から導入可能で、東京都の「中小企業サイバーセキュリティ基本対策事業」では、UTMやEDRの無料体験プログラムを提供しています。
対策5:インシデント対応計画の策定
どれだけ対策を講じても、サイバー攻撃を100%防ぐことは不可能です。重要なのは、攻撃を受けた時に 迅速かつ適切に対応し、被害を最小限に抑えることです。インシデント対応計画には、攻撃を発見した時の初動対応、社内外への連絡体制、システムの隔離手順、証拠保全の方法、復旧手順などを具体的に記載し、「誰が」「何を」「いつまでに」行うかを明確にします。

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サイバードミノを防ぐ!取引先への影響を最小限にする方法
中小企業のサイバー攻撃で最も深刻な問題の一つが「サイバードミノ」です。これは、一つの企業がサイバー攻撃を受けることで、取引先やその先の企業まで連鎖的に業務停止や被害が拡大する現象を指します。IPAの調査では、サイバー攻撃を受けた中小企業の約7割で取引先にも影響が及んでいることが明らかになっています。
近年、大手企業では取引先の中小企業に対して一定レベルのセキュリティ対策を要求するケースが増えています。具体的な要求項目として多いのは、「サイバー攻撃を速やかに検知、遮断する対策の実施」「第三者機関による定期的なセキュリティ監査の実施」「全従業員への定期的なセキュリティ教育の実施」などです。これらの要求に対応できない場合、取引継続が困難になる可能性もあります。
一方で、適切なセキュリティ対策を行っている中小企業では、それが取引先との信頼関係構築につながっているという調査結果もあります。普段からセキュリティ対策投資を行っている中小企業の約5割が、そうでない企業の2倍近くの取引につながったと実感しています。
専門家に相談すべきタイミングと選び方
以下のような状況では専門家への相談を検討すべきです。
- 従業員数が20名を超えて管理が複雑になってきた場合
- 個人情報や機密情報を大量に扱う業種の場合
- 過去にセキュリティインシデントを経験した場合
- 取引先からセキュリティ対策の証明や監査を求められた場合
- 新しいITシステムやクラウドサービスの導入を検討している場合
セキュリティ専門業者を選ぶ際は、下記を参考にしてください。
- 中小企業での支援実績が豊富であること
- 情報処理安全確保支援士やCISMなどの専門資格を持つスタッフが在籍していること
- ISMS(ISO27001)やプライバシーマークなどのセキュリティ認証を取得していることを確認
- 24時間365日のサポート体制
- 初回の現状診断を無料で実施してくれる業者
2025年に注意すべき新たな脅威と今後の展望
サイバー攻撃の手法は日々進歩しており、2025年後半から2026年にかけて、さらに新しい脅威の登場が予想されます。 音声生成AIにより経営者の声を完璧に模倣した電話詐欺や、動画生成AIによる偽の会議録画などが登場する可能性があります。対策として、重要な指示や取引については、複数の手段での確認を義務付ける 「ダブルチェック体制」の構築が効果的です。
また、スマートカメラ、ネットワークプリンター、IoTセンサーなど、インターネットに接続された機器を狙った攻撃が増加しています。IoT機器のセキュリティ対策では、 デフォルトパスワードの変更、 不要な機能の無効化、 定期的なファームウェアアップデートが基本です。重要な業務ネットワークとIoT機器のネットワークを分離することで、万が一の侵入時でも被害を限定できます。
まとめ
サイバーセキュリティ対策は一度実施したら終わりではありません。脅威は日々進歩しており、対策も継続的にアップデートしていく必要があります。重要なのは、完璧を目指すのではなく、 現在できる最善の対策から始めて、段階的に改善していくことです。小さな一歩でも、継続することで大きな成果につながります。
2025年のサイバー脅威は確実に高度化していますが、適切な知識と対策により、中小企業でも十分に対抗することができます。この記事でご紹介した対策を参考に、ぜひ今日からセキュリティ強化に取り組んでください。具体的な導入方法や自社に適した対策については、 株式会社テクノリレーションズまでお気軽にご相談ください。経験豊富な専門スタッフが、皆様の企業規模や業種に応じた最適なセキュリティソリューションをご提案いたします。