「うちの会社は規模が小さいから、サイバー攻撃の標的にはならないだろう」と考えていませんか? 実は2024年の調査で、サイバーインシデントの被害を受けた中小企業の約7割が取引先にも影響を与える「サイバードミノ」が発生しており、ランサムウェア被害も前年比37%増加していることが判明しました。
本記事では、ITが苦手な経営者や限られた予算で業務をこなすIT担当者、フリーランスの士業の方に向けて、 2025年に本当に必要なセキュリティ対策を予算を抑えて実現する方法を解説します。
2024年最新調査で判明した衝撃の事実
- 中小企業のランサムウェア被害は前年比37%増加
- サイバー攻撃被害の平均復旧期間は5.8日、被害額平均73万円
- 過去3年間でサイバー攻撃を受けた中小企業の約7割で取引先にも被害が波及
- セキュリティ対策投資を行っている企業の約5割が取引機会の拡大を実感
なぜ中小企業がサイバー攻撃の標的になるのか
2025年現在、サイバー攻撃者は明確な戦略を持って中小企業を狙っています。その理由は以下の通りです。
大企業への入り口として利用される
大企業のセキュリティ対策が強化された結果、攻撃者は取引先の中小企業を踏み台として使う手法にシフトしています。これが「サプライチェーン攻撃」と呼ばれる手法で、2024年に急増しました。
対策の不備が狙われやすい
中小企業は人材や予算の制約から、以下のような脆弱性を抱えがちです。
- OSやソフトウェアのアップデートを後回しにする傾向
- 従業員への十分なセキュリティ教育が実施できていない
- 組織的なセキュリティ体制が整備されていない(約7割の中小企業)
- VPNやリモートデスクトップの設定が不適切(攻撃の83%がこれらの経路から侵入)
身代金の支払い能力があると見込まれる
個人よりも資金があり、大企業よりも交渉しやすいという理由で、中小企業は格好のターゲットとなっています。
今すぐ実践できる!中小企業のためのセキュリティ対策8選
以下の対策は、 すべて無料から数万円程度の予算で実現可能です。「できることから始める」姿勢で取り組みましょう。
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自動アップデートの設定と管理
最も基本的でありながら効果の高い対策です。2024年の調査では、 脆弱性を突かれた攻撃が48%を占めることが判明しています。
Windows 11では標準で自動更新が有効ですが、企業環境では無効化されている場合があります。IT担当者は最低でも月1回、全社のアップデート状況を確認しましょう。
また、使用しているソフトウェアの一覧を作成し、定期的なアップデート計画を立てることで、見落としを防げます。
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法人向けウイルス対策ソフトの導入
無料ソフトでは検知できない高度な攻撃が増加しているため、業務利用では法人向けの有料ソフトが必須です。
現在主流の法人向けウイルス対策ソフトには、従来のパターンマッチング検知に加えて、AI を活用した行動分析機能や、未知のマルウェアを検知する機能が搭載されています。
月額1台あたり500円程度から利用でき、一元管理機能により IT担当者の負担も軽減されます。
選定のポイントEDR(Endpoint Detection and Response)機能を持つ製品を選ぶことで、感染後の被害拡大を防ぐことができます。また、クラウド管理対応の製品なら、リモートワーク環境でも一元管理が可能です。
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パスワード管理とゼロトラスト認証の導入
2024年の攻撃では、 ID・パスワードの盗取による被害が36.8%を占めています。同じパスワードの使い回しは、一つのサービスから漏洩した場合に芋づる式で被害が拡大する原因となります。
法人向けパスワード管理ツールの導入により、複雑で一意なパスワードの自動生成・管理が可能になります。さらに、重要なシステムには必ず二段階認証(2FA)または多要素認証(MFA)を設定しましょう。
Microsoft Authenticator や Google Authenticator などの認証アプリを使用することで、SMS 認証よりも高いセキュリティを実現できます。
2025年のトレンド:パスワードレス認証
Windows Hello や Touch ID を活用した生体認証により、パスワード自体を不要にする技術が普及しています。導入コストも下がっているため、検討の価値があります。
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クラウドサービスによる情報管理の一元化
Microsoft 365 や Google Workspace などのクラウドサービスは、個別にセキュリティツールを導入するよりもコストパフォーマンスが高い選択肢です。
これらのサービスには以下の機能が標準で含まれています。特に、ファイルを個人のPC やUSB メモリで管理している場合は、紛失・盗難リスクが高いため、早急にクラウド移行を検討しましょう。
- 自動バックアップとバージョン管理
- アクセス権限の細かな設定
- 不審なアクセスの自動検知・通知
- デバイス紛失時のリモートワイプ機能
- 監査ログによる利用状況の追跡
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情報共有とファイル管理ルールの明文化
技術的な対策だけでなく、 社内ルールの整備により人的ミスによる情報漏洩を防ぐことが重要です。
以下のルールを文書化し、全従業員に周知しましょう。なおこれらのルールは定期的に見直し、新しい脅威に対応してアップデートすることが必要です。
- 業務データの保存場所(個人PC 禁止、クラウドサービス指定)
- 外部への資料送付方法(暗号化、パスワード設定)
- USB メモリ等の外部記録媒体の利用制限
- 私用デバイスでの業務データアクセス禁止
- 退職者のアカウント削除手順
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最新フィッシング攻撃への対策強化
2024年から2025年にかけて、AI を活用した精巧なフィッシングメールが急増しています。従来の「日本語が不自然」という判別方法では対応できません。
最新のフィッシング攻撃の特徴
- 実在する企業の正確な文面とデザインを模倣
- 送信者の部署名や担当者名が実在する
- 緊急性を装った巧妙な心理的操作
- QR コードを使った新しい誘導手法
効果的な対策方法
- メールセキュリティソリューションの導入(URL の安全性を自動チェック)
- 重要な連絡は必ず別の手段(電話等)で確認する社内ルール
- 定期的な模擬フィッシング訓練の実施
- 疑わしいメールの報告窓口設置
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VPN とリモートアクセスのセキュリティ強化
リモートワークの普及により、 VPN 機器やリモートデスクトップ経由の攻撃が全体の83%を占めるようになりました。
以下の対策により、リモートアクセスのセキュリティを向上させましょう:
- VPN 機器のファームウェアを最新に保つ
- 不要なポートを閉じ、アクセス元IP アドレスを制限
- リモートデスクトップのデフォルトポート(3389)を変更
- 接続時間の制限(業務時間外のアクセス禁止)
- 接続ログの定期的な確認
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信頼できるIT パートナーとの連携
社内だけでは対応が困難な高度な脅威に対しては、 外部の専門家との連携が不可欠です。
以下のサービスを提供するパートナーを見つけましょう:
- インシデント発生時の緊急対応支援
- 定期的なセキュリティ診断とアドバイス
- 従業員向けセキュリティ教育の実施
- 最新脅威情報の提供
補足弊社「 株式会社テクノリレーションズ」では、中小企業や士業向けに、最新のセキュリティ脅威に対応した包括的な対策を提供しています。2025年の新しい脅威に対する予防策から、万が一の際の迅速な復旧支援まで、お客様の事業継続をトータルでサポートいたします。
2025年に特に注意すべき新しい脅威
AI を悪用したサイバー攻撃
2024年5月には、生成AI を悪用してランサムウェアを作成した容疑者が逮捕される事件が発生しました。 AI 技術の普及により、攻撃の精度と効率が飛躍的に向上しています。
サプライチェーン攻撃の高度化
大手企業を直接攻撃するのではなく、取引先の中小企業を経由して侵入する手法が主流になっています。これにより、取引先からのセキュリティ要求も厳しくなっています。
クラウドサービスを標的とした攻撃
多くの企業がクラウドサービスを利用するようになった結果、クラウド環境を狙った攻撃が増加しています。適切な設定と監視が重要です。
セキュリティ対策による事業メリット
セキュリティ対策は単なるコストではありません。 2024年の調査では、セキュリティ対策を実施している企業の約5割が取引機会の拡大を実感しています。
セキュリティ対策による具体的なメリット
- 取引先からの信頼向上による新規受注機会の増加
- 大企業との取引継続に必要な要件をクリア
- サイバー保険の保険料削減
- 従業員の安心感向上による生産性向上
- 事業継続計画(BCP)の一環としてのリスク軽減
まとめ:2025年こそセキュリティ対策を始める年に
2024年の調査結果は、中小企業にとってセキュリティ対策がもはや「やらなければならない」レベルまで来ていることを明確に示しています。 「うちは大丈夫」という考えは、もはや通用しないのが現実です。
しかし、適切な対策を段階的に導入すれば、限られた予算でも十分な効果を得ることができます。まずは基本的な対策から始めて、徐々にレベルアップしていくことが重要です。
セキュリティ対策は事業を守るだけでなく、取引先からの信頼獲得や新しいビジネス機会の創出にもつながります。2025年こそ、セキュリティ対策を事業成長の投資として捉え、積極的に取り組んでいきましょう。