そのパスワード、大丈夫?社内の“なんとなく運用”が招くセキュリティ事故

中小企業では「社内のパスワード管理があいまいで不安です」といったご相談をよくいただきます。

実際、共通のパスワードを複数人で使っていたり、紙に書いたまま放置されていたりと、“なんとなく運用”が常態化しているケースも少なくありません。

本記事では、こうした日常のパスワード管理の「あるある」と、それが招くリスク、そして今日からできる見直しのポイントについて解説します。

“なんとなく”のパスワード管理が危ない理由

社内で以下のような運用がされていないでしょうか?

  • メールやクラウドのログイン情報が紙に書かれて共有されている
  • 退職者のアカウントがそのまま放置されている
  • 管理画面のパスワードが社内で使い回されている
  • 「設定は〇〇さん任せ」で誰も中身を把握していない

一見、業務がスムーズに回るように見えても、これらはすべて“誰でもアクセスできる=攻撃者もアクセスできる”状態です。

また、万が一トラブルが起きたとき「誰が・いつ・何をしたのか」が追えないため、原因の特定や復旧にも時間がかかります。

実際にあった中小企業での事例

ある企業では、退職者が使用していたGoogleアカウントのパスワードが変更されておらず、その後外部から不審なアクセスが発覚しました。

幸いにも機密情報の流出には至りませんでしたが、経営層からは「情報管理の意識が甘すぎる」と指摘が入り、急きょセキュリティ見直しプロジェクトが立ち上がることになりました。

今日から始められるセキュリティ運用の見直しポイント

1. パスワードは「個人別+管理表」で一元管理する

共通パスワードではなく、利用者ごとにIDとパスワードを分けるのが基本です。管理には、Googleスプレッドシート+アクセス制限の組み合わせや、専用のパスワード管理ツール(例:1PasswordやBitwardenなど)を活用しましょう。

2. アカウントは「人」に紐づけ、退職・異動時は速やかに削除

“個人アカウント”での運用にしておけば、担当者が変わった際にそのままアカウントを閉鎖するだけで安全に引き継ぎができます。退職者のアカウントを残しておくのは、万が一のリスクです。

3. 管理者アカウントの共有は原則NG。必要時のみ、一時的に

システムやGoogle Workspaceなどの“管理者アカウント”は、基本的に特定の信頼できる担当者1名に絞るべきです。「誰でもログインできる状態」は、内部不正のリスクも高めます。

 
補足
 

緊急時のバックアップとして、信頼できる外部ITサポート会社にも一部管理情報を託しておくことで、万が一の対応力を高めることができます。

4. パスワードは“定期変更”よりも“強固な設定+二要素認証”が基本

以前は「3か月ごとにパスワードを変更する」ことが一般的とされていましたが、現在はむしろ無意味な定期変更は推奨されていません

その代わりに求められるのは、以下のようなセキュリティ対策です。

  • 英数字・記号を含んだ長くて推測されにくいパスワードを使用する
  • 1つのパスワードを複数のサービスで使い回さない
  • 二段階認証(2要素認証/MFA)を導入する

特に「二段階認証」は、たとえパスワードが漏れても第三者がログインできないようにする強力な対策です。

たとえばGoogle WorkspaceやMicrosoft 365、Dropboxなど、ビジネスで使われる多くのクラウドサービスには標準機能として備わっています。ぜひ活用しましょう。

5. ITに強くなくても運用できる“ルールの簡素化”がカギ

難しすぎるルールは形骸化してしまいます。パスワード管理は「ルールを作って終わり」ではなく、「誰が見ても分かる・使える」ことが継続のポイントです。

まとめ|セキュリティは「人と運用」で守るもの

どんなに強力なセキュリティソフトやシステムを導入していても、社内の運用が甘ければ意味がありません。

大切なのは「意識」と「仕組み」。日々の“なんとなく”を見直すだけでも、セキュリティレベルは大きく向上します。

株式会社テクノリレーションズでは、アカウント・パスワード管理を含めたセキュリティ運用ルールの整備支援を行っております。「うちの管理体制、大丈夫かな…?」と不安な方は、ぜひお気軽にご相談ください。