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「中小企業でもテレワークのセキュリティ対策って必要なの?」「セキュリティ対策にお金をかける余裕がない…」
このような声を、神奈川県内の中小企業経営者から数多くお聞きします。テレワークが普及した今、中小企業こそセキュリティ対策が重要になっています。なぜなら、中小企業の方がサイバー攻撃の標的になりやすく、一度被害を受けると経営に深刻な影響を与えるからです。
実際に、中小企業のテレワーク環境では以下のようなセキュリティリスクが頻発しています。
- テレワーク中の社員が家族共用PCで顧客情報を扱っている
- セキュリティ対策が不十分なWi-Fiでテレワークを実施
- 中小企業向けのセキュリティ教育が行われていない
- テレワーク用のセキュリティポリシーが未策定
- セキュリティインシデント発生時の対応体制が未整備
この記事では、中小企業が今すぐ実践できるテレワークセキュリティ対策を、優先順位付きの5ステップで詳しく解説します。高額なセキュリティツールを使わずとも、基本的な対策で大幅にリスクを軽減できます。
中小企業のテレワークが狙われる理由とセキュリティリスク
「うちみたいな中小企業が狙われるわけがない」と考えるのは危険です。むしろ、中小企業の方がサイバー攻撃者にとって「攻撃しやすいターゲット」なのです。
中小企業がテレワークセキュリティで狙われやすい理由
セキュリティ専門機関の調査によると、中小企業が攻撃対象になりやすい理由は以下の通りです。
- セキュリティ専任者の不在:中小企業の多くはITやセキュリティの専門家がいない
- 限られたセキュリティ予算:大企業と比べてセキュリティ投資が後回しになりがち
- テレワーク環境の脆弱性:急速なテレワーク導入でセキュリティ対策が追いついていない
- 従業員のセキュリティ意識のばらつき:統一されたセキュリティ教育が実施されていない
- 大企業への攻撃の踏み台:中小企業のシステムを経由して大手取引先を攻撃
中小企業のテレワークで実際に起きたセキュリティ事故事例
当社がサポートした神奈川県内の中小企業で実際に発生したテレワークセキュリティ事故をご紹介します(企業の特定を避けるため一部改変)。
事例1テレワーク中のマルウェア感染
テレワーク中の社員が家族共用PCを使用し、お子さんがダウンロードしたゲームアプリ経由でマルウェアに感染。同じPCに保存されていた顧客の設計図面データが暗号化され、1週間の業務停止を余儀なくされました。
事例2テレワーク用Wi-Fiからの情報漏えい
社員のテレワーク環境で使用していたWi-Fiルーターが初期設定のまま使用されており、近隣住民が同じネットワークにアクセス可能な状態でした。顧客の個人情報を含むファイルが外部から閲覧されるリスクがありました。
事例3テレワーク中のWeb会議での情報流出
テレワーク中のWeb会議で、背景に顧客の契約金額が書かれたホワイトボードが映り込み、他の参加者に機密情報が露呈してしまいました。
これらの事例に共通するのは、「テレワーク特有のセキュリティリスクへの対策不足」です。適切なセキュリティ対策を講じていれば防げた事故ばかりです。
【中小企業必見】テレワークセキュリティ対策5ステップ
中小企業がテレワークセキュリティを強化するには、限られた予算と人員で最大の効果を得る必要があります。以下の5ステップを優先順位順に実施することで、効率的にセキュリティレベルを向上させることができます。
ステップ1:テレワーク環境のWi-Fiセキュリティ強化
中小企業のテレワークで最も基本的で重要なセキュリティ対策が「Wi-Fiの安全性確保」です。多くの中小企業のテレワーカーが家庭用Wi-Fiを使用していますが、初期設定のままでは非常に危険です。
中小企業向けWi-Fiセキュリティチェックポイント
- Wi-Fiパスワードの強化:「password」「12345678」などの簡単なパスワードは即座に変更。12文字以上の複雑なパスワードを設定
- 暗号化方式の確認:古い「WEP」方式は使用禁止。必ず「WPA2」以上の暗号化を使用
- ルーター管理パスワードの変更:初期設定の管理者パスワードを独自のものに変更
- ファームウェアの定期更新:セキュリティの脆弱性を修正するため、最新版に更新
- ゲストネットワークの無効化:不要なゲスト用Wi-Fiは無効にしてセキュリティリスクを軽減
これらの設定は一度行えば継続的な効果があり、中小企業のテレワークセキュリティの基盤となります。設定方法が分からない場合は、ルーターメーカーのサポートに問い合わせれば丁寧に教えてもらえます。
ステップ2:テレワーク端末の業務・私用分離
中小企業のテレワークでよく見られるのが「業務用PCの家族共用」です。これは深刻なセキュリティリスクを生み出します。
理想的な対策:専用端末の貸与
予算が許すなら、テレワーク用の業務専用ノートPCを会社から貸与する。初期投資は必要ですが、セキュリティリスクを大幅に軽減できます。
予算制約がある中小企業向けの現実的対策
- 専用ユーザーアカウント作成:同じPCでも業務専用のユーザーアカウントを作成し、家族とは完全に分離
- 業務データの保存場所限定:業務ファイルはローカルに保存せず、クラウドストレージのみに保存
- 利用時間の明確化:「平日9-18時は業務専用」などのルールを家族と共有
- セキュリティソフトの導入:最低限のウイルス対策ソフトを導入

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ステップ3:テレワーク中のWeb会議セキュリティ
中小企業のテレワークでWeb会議は欠かせませんが、意外な情報漏えいリスクが潜んでいます。
テレワークWeb会議のセキュリティ対策
- 背景の徹底管理:機密文書、顧客名リスト、価格表などが映り込まないよう注意
- バーチャル背景の活用:ZoomやTeamsの背景ぼかし機能を必須設定
- 音声環境の確保:家族の会話や機密情報が音声に入らない環境を確保
- 画面共有の限定:デスクトップ全体ではなく、特定のアプリケーションのみ共有
- 会議室パスワードの設定:Web会議には必ずパスワードを設定し、無関係者の参加を防ぐ
ステップ4:テレワーク対応のクラウドセキュリティ
中小企業のテレワークでは、従来の「USBメモリでファイル持ち帰り」や「メール添付」による情報共有は非常に危険です。クラウドサービスを活用した安全な情報管理に移行しましょう。
中小企業向けクラウドセキュリティ設定
- 外部共有を「組織内のみ」に制限
- 重要ファイルは「閲覧のみ」権限で共有
- 共有リンクに有効期限を設定
- 2段階認証を全アカウントで有効化
中小企業のテレワーク情報管理ルール例
- 業務ファイルは必ずクラウド上で管理、ローカル保存禁止
- 顧客情報を含むファイルは暗号化して保存
- 外部への共有は事前承認制
- テレワーク終了時は必ずログアウト
ステップ5:中小企業向けテレワークセキュリティポリシー策定
中小企業でも明文化されたテレワークセキュリティポリシーが必要です。大企業のような複雑な文書は不要ですが、最低限のルールは明確にしておきましょう。
テレワーク環境に関する規定
- テレワーク実施場所の事前届出義務
- カフェ・コワーキングスペースでの作業可否
- 家族との端末共有禁止
情報管理に関する規定
- 業務データの保存場所指定
- USBメモリ等外部記憶媒体の使用禁止
- 個人情報取扱時の特別ルール
インシデント対応規定
- セキュリティ事故発生時の報告フロー
- 端末紛失・盗難時の緊急対応手順
- 不審メール受信時の対応方法

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中小企業がテレワークセキュリティで陥りがちな落とし穴
これまで多くの中小企業のテレワークセキュリティ導入をサポートしてきた経験から、よくある失敗パターンをご紹介します。
落とし穴1:「うちは小さいから大丈夫」という思い込み
中小企業だからこそ狙われやすく、一度被害を受けると経営への影響が深刻になります。規模に関わらずセキュリティ対策は必須です。
落とし穴2:技術的対策のみに頼る
高額なセキュリティツールを導入しても、従業員の意識が低ければ効果は限定的です。技術と教育の両面からアプローチしましょう。
落とし穴3:完璧を求めすぎる
大企業レベルの完璧なセキュリティを目指すと挫折します。まずは基本的な対策から着実に実施することが重要です。
落とし穴4:一度設定して放置
セキュリティ脅威は日々進化しています。定期的な見直しとアップデートが不可欠です。
中小企業のテレワークセキュリティを外部サポートで強化する方法
これまでご紹介した対策は、中小企業でも十分に内製化できるものばかりです。ただし、以下のような場合は、専門家のサポートを活用することでより効率的かつ確実にセキュリティレベルを向上させることができます。
外部サポートが必要な中小企業の特徴
- 従業員数10名以上でテレワークを本格導入したい
- 顧客の個人情報を大量に扱う業種(士業、医療、金融等)
- 過去にセキュリティインシデントを経験した
- 取引先からセキュリティ対策の証明を求められている
- 社内にIT・セキュリティの専門知識を持つ人材がいない
- テレワークセキュリティの現状把握ができていない
中小企業向けテレワークセキュリティサポートサービス
- セキュリティ診断:現在のテレワーク環境の脆弱性を詳細調査
- セキュリティツール選定・設定:予算に応じた最適なツールの提案・導入
- ポリシー策定支援:業種・規模に応じたセキュリティポリシーの作成
- 従業員教育:実践的なセキュリティ研修の企画・実施
- インシデント対応:緊急時の迅速な対応・復旧作業
- 継続的な監視・メンテナンス:定期的なセキュリティチェック
特に中小企業では、「事故が起きてから」ではなく「事故が起きる前に」専門家との関係を構築しておくことが重要です。

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まとめ:中小企業のテレワークセキュリティは段階的な取り組みが成功の鍵
中小企業がテレワークを安全に実施するためのセキュリティ対策について、5つのステップで詳しく解説しました。重要なのは、「完璧を目指すより、基本的な対策を確実に継続する」ことです。
テレワークは中小企業にとって、人材確保や生産性向上の大きなチャンスです。適切なセキュリティ対策を講じることで、そのメリットを安心して享受できるようになります。
まずは今日から、Wi-Fiのパスワード変更という小さな一歩から始めてみませんか?その積み重ねが、中小企業の安全なテレワーク環境を作り上げていきます。
株式会社テクノリレーションズでは、お客様の運用スタイルに合わせたテレワーク基本方針やセキュリティポリシーの策定をお手伝いしています。文書作成だけでなく、テレワーカー向けの定期的なセキュリティ教育、ヒアリング、アンケート調査なども実施しており、継続的なセキュリティレベル向上をサポートします。
「自社に合ったテレワークルールを作りたい」「従業員のセキュリティ意識を高めたい」「現状のセキュリティレベルを客観的に知りたい」など、どんな段階からでも大丈夫です。神奈川県を中心とした中小企業の皆様、お気軽にご相談ください。