「業務でLINE使ってるけど、便利だから問題ないでしょ?」――そんな声をよく聞きます。確かに、LINEや無料チャットツールは手軽で、誰でもすぐに使える点が魅力です。しかし、その便利さの裏にある“情報漏えいリスク”を、どれだけの方が意識しているでしょうか?
中小企業の経営者の中には、「うちは機密情報なんてないから大丈夫」と考えている方も少なくありません。でも、もし取引先とのやりとり、顧客情報、社内の経営判断などの内容が、LINEから漏れてしまったら…?大手企業だけでなく、中小企業も狙われる時代です。
今回は、無料ツールを使うことで発生しやすい“社内情報の漏えいリスク”と、安全に業務でツールを活用するための考え方をご紹介します。
なぜ無料チャットツールが危険なのか?
誰もが使えるツール=安全とは限りません。実は無料チャットツールには、業務で使うには不向きな理由がいくつもあります。以下では、代表的な3つのリスクを掘り下げて解説します。
1. セキュリティ対策が個人任せになっている
たとえばLINEは、スマートフォンと個人アカウントがひもづいています。退職者がグループから抜けないまま情報が流れ続けていた、というケースは非常によくあります。特に、退職時のアカウント管理が曖昧なままだと、意図せず元社員が業務情報にアクセスできてしまうリスクが発生します。
しかも、業務用LINEアカウントは原則として存在しないため、管理者が誰なのかも不明確。パスワードの共有や、他人のスマホからのアクセスも防ぎきれません。スマホ自体にロックをかけていないケースや、公共Wi-Fiでやりとりしている例も少なくなく、攻撃者から見れば“入り口”だらけの状態です。
2. 企業利用を想定していない設計
LINEやMessengerは、もともと個人間の連絡用に作られたツールです。メッセージのログ保存やアクセス制御、退職者のアカウント削除など、企業として必要な“統制機能”が備わっていません。
情報管理の観点から見れば、やりとりの履歴が残らないこと、第三者による確認ができないことは重大な欠点です。情報漏えいや内部不正が発覚しても、どこから漏れたのか把握できない――この「痕跡が残らない」ことが、リスクを増幅させています。
3. 使い方にバラつきがある
無料ツールでは、誰がどのように使うかが属人的になりがちです。「社長はLINE派」「営業はMessenger」「経理はメールのみ」といったバラバラな運用では、社内での情報共有がうまくいかず、ミスや伝達漏れの温床になります。
また、業務とプライベートの区別がつきにくく、社員が私物スマホでやりとりしている場合、休日や退勤後の連絡によってプライバシーの侵害や働き方改革の逆行につながる恐れもあります。
実際に起きた“情報ダダ漏れ”のケース
ここでは、実際に中小企業や士業事務所で起きた情報漏えいの事例を紹介します。
・ある建設会社では、現場写真をLINEグループで共有していたが、退職した社員がグループに残ったまま外部へ情報を持ち出していた。
・ある士業事務所では、無料チャットで顧客情報をやりとりしていたが、スマホの紛失により個人情報が流出。弁護士会から厳重注意を受けた。
・ある飲食チェーンでは、アルバイトのLINEグループで勤務表が共有されていたが、スタッフがSNSに画像をアップしてしまい、個人の勤務スケジュールが外部に公開された。
どれも「ちょっとした油断」から起きた事故ですが、被害は大きく、信頼の失墜につながりました。
“安全に使えるツール”と“使い方”の見直しを
情報漏えいを防ぐには、「無料か有料か」ではなく、「業務に適したツールを使っているか」が重要です。以下では、安全に使えるツールの条件を具体的に説明します。
1. 管理者権限があるツールを選ぶ
たとえば、Microsoft TeamsやGoogle Chatなどは、管理者がユーザー追加や削除、権限管理ができます。退職者が使い続けることも防げます。アクセス履歴の確認や、ログイン場所の監視機能があるものを選ぶことで、不審なアクセスを早期に検知できます。
2. メッセージのログ保存ができる
「言った言わない」を防ぐためにも、業務でのやり取りはすべて記録に残る形にしましょう。チャット内容の保存やエクスポートが可能なツールがおすすめです。たとえばGoogle WorkspaceではVaultという監査機能が用意されており、一定期間のログ保存や検索が可能です。
3. 情報の分類とルールづくり
「何をどこまでチャットでやりとりしていいか?」を社内でルール化しておくことも重要です。たとえば「顧客情報はメールのみ」「契約に関わる話は対面または電話」など、具体的に決めておきましょう。
さらに、テンプレートを用意しておくと、社内での使い方が統一され、不要なやりとりや誤解も減ります。定期的な見直しも忘れずに行うようにしましょう。
まとめ|“無料だから便利”を見直し、安全な業務環境を
無料ツールは確かに便利です。しかし、「便利=安全」ではありません。その手軽さゆえに、管理がゆるくなり、大切な情報が漏れるリスクが高まります。
中小企業こそ、「小さな事故」が「大きな信頼の損失」につながることを意識すべきです。「何となく使っていたツールが、実はリスクだらけだった…」となる前に、一度社内のツール利用を見直してみませんか?
株式会社テクノリレーションズでは、業務に適したツールの選定から、情報管理のルール作成、運用サポートまで幅広く対応しています。「無料ツールで大丈夫?」と不安な方は、ぜひ一度ご相談ください。