マニュアルがない職場では、業務が属人化しがちです。「〇〇さんがいないとわからない」「新人が来ても教えるのに時間がかかる」——こんな状況は、多くの中小企業で起こっています。
マニュアルの役割は、“いつもの仕事”を見える化して、誰でも再現できるようにすること。人が変わっても業務が止まらない仕組みづくりに欠かせません。
マニュアル作成の基本ルール
マニュアルは“通常運転”を書けばOK
「マニュアルはすべてのパターンを網羅しないと意味がない」と思っていませんか? 実はそれが整備の妨げになることも多いです。
マニュアルの目的は、「誰がやっても基本の業務が同じようにできること」です。つまり、“いつもどおりのやり方”をまとめるだけで十分です。
イレギュラー対応は「判断基準」だけ書く
現実の仕事では例外も多く、「そのとき判断」となるケースも少なくありません。とはいえ、それを理由に何も書かないのは本末転倒です。
例外が起きたときにどう判断するか、誰に相談するかといった「基本方針」だけでもマニュアルに含めておくことで、現場が迷わず動けるようになります。
ここまでできたら、AIの出番です
ここまでで、「マニュアルが必要な理由」「何を書けばいいか」が整理できたら、いよいよAIの出番です。
最近のAIツールは、話しかけるように使うだけで、マニュアルの“下書き”を作ってくれます。時間がない・書くのが苦手という人でも、思い浮かぶことをそのまま打ち込めば形にしてくれるのが魅力です。
AIでマニュアル化しやすい業務の例
AIを活用しやすい業務は、以下のように“やることが決まっているもの”です:
- 来客対応の手順
- 備品発注の流れ
- 請求書発行のルール
こうした「毎回やることが同じ」な業務は、AIに指示するだけでベースの文章を作ることができ、調整も簡単です。
AIに任せすぎないための注意点
AIは便利なツールですが、情報の扱いには注意が必要です。特に:
- 社外秘の情報
- 顧客に関する情報
- 個人情報
これらはAIに入力しないようにしましょう。AIツールはクラウド上で動作することが多く、情報漏えいのリスクをゼロにはできません。「公開しても困らない範囲で使う」という意識が大切です。
また、AIが出力した内容に誤りが含まれていることも少なくありません。もっともらしく見えても、実際には事実と違う説明が混ざっていることもあります。AIにマニュアルを書いてもらっても、最終的な責任は“あなた”にあります。
したがって、「AIが作ってくれたから大丈夫」と思わずに、必ず内容を確認し、必要であれば加筆修正を行いましょう。AIはあくまで“補助”であり、全面的に信頼するのではなく「使い方次第」だという認識を持つことが大切です。
ツール選びと情報との向き合い方
AIといっても、使えるツールはChatGPTだけではありません。Notion AI、Microsoft Copilot、Claude、Google Geminiなど、さまざまなサービスが日々登場しています。
自分の業務に合うツールを見つけるには、複数のサービスを実際に使ってみることが一番の近道です。
ただし、ここで注意したいのが「情報の信頼性」です。インターネットやYouTube上には、AIを過剰に持ち上げる人や、実態のないノウハウを売りつけるような“詐欺まがい”の情報も出回っています。
「誰が発信しているのか」「実績や事例があるか」を見極める目を持つことが、これからのAI活用ではますます重要になっていきます。
AIを使ったマニュアル整備の進め方
最後に、実際にAIを使ってマニュアルを整備する際の流れを簡単にまとめておきます。
- 社内で「標準業務」と「例外対応」の棚卸しをする
- AIに「〇〇の手順をマニュアルにしたい」と話しかけて、たたき台を作る
- 現場担当者が実情に合わせて調整する
- 最終版を共有フォルダや印刷物として配布・掲示する
最初から完璧を目指す必要はありません。まずは「1つの業務だけ」からでもOKです。AIを味方にして、マニュアルづくりのハードルをぐっと下げていきましょう。
まとめ
マニュアル整備が進まない理由の多くは、「書くのが面倒」「何を書けばいいかわからない」「どうせすぐ使われなくなる」といった思い込みにあります。
しかし、AIの力をうまく活用すれば、その“最初の一歩”は驚くほど軽くなります。そして、その一歩をきっかけに、業務の見える化が進み、引き継ぎもラクになり、組織としての安定感が増します。
AIはあくまで道具。使いこなすのは、あなた自身です。
マニュアルを作ることは、未来の自分たちを助けること。忙しい中小企業こそ、いまAIを“上手に頼って”、業務を強くしていきましょう。