「社員が自分のスマホで業務メールを確認している」「LINEやチャットアプリで顧客とやり取りしている」──今や中小企業でも当たり前の光景になりました。
このように、個人のスマートフォンを業務に活用することをBYOD(Bring Your Own Device)といいます。
たしかに便利ではありますが、一方で「会社のデータが個人端末から漏れるリスク」も高まっているのです。
この記事では、ITに詳しくない経営者の方でも理解できるよう、「社員のスマホによるセキュリティリスク」とその対策方法をわかりやすく解説します。
そもそも「BYOD」ってなに?
BYODとは、「社員が自分のスマートフォンやパソコンを業務に使うこと」を意味します。
たとえば、以下のようなケースが該当します:
- 自分のスマホで会社のメールを送受信
- LINEやチャットツールで社内外とやりとり
- Google DriveやDropboxをスマホから閲覧
- ZoomやMeetなどのWeb会議にスマホで参加
中小企業では「会社用の端末を支給する余裕がない」「手軽にコミュニケーションを取りたい」といった理由から、BYODが自然に広がっているのが実情です。
見落としがちな“社員スマホ”の3大リスク
社員のスマホはあくまで“個人の持ち物”。管理者である会社の目が届かないため、さまざまなリスクが潜んでいます。
1. ウイルス・マルウェア感染
社員のスマホがウイルスに感染していた場合、メールやクラウド経由で社内ネットワークに被害が広がることがあります。
たとえば、スマホで開いた添付ファイルがウイルス入りだった場合、そのままPCにも同期され、重要なファイルを暗号化される「ランサムウェア被害」に発展することも。
2. 紛失・盗難による情報漏洩
スマホには業務メール・社内資料・顧客情報が大量に保存されています。
ロックをかけていない状態で紛失すれば、それだけで“情報ダダ漏れ”です。
中小企業では「パスコードなし」「指紋認証オフ」「バックアップも取っていない」といった状態のまま使っている社員も少なくありません。
3. 家族・知人からの“無意識な漏洩”
プライベート端末では、家族がゲームをしたり、子どもが勝手に写真やファイルにアクセスしたりすることもあります。
「家族に悪気はない」からこそ、経営者の意識が甘くなりがちですが、業務用アプリや資料が外部に流出する入り口になることもあるのです。
BYODが中小企業にもたらす“メリット”と“落とし穴”
リスクがあるとはいえ、BYODがこれだけ普及しているのは、それなりの理由があります。実際、うまく使えばコスト削減や業務効率化につながるのです。
中小企業にとってのBYODのメリット
- 端末支給が不要なので、コストがかからない
- 使い慣れたスマホなので、操作ミスが少ない
- 外出先でもメールや資料が確認できて便利
- 社員が自主的にアプリやツールを活用しやすい
特に中小企業では「社用スマホの台数分コストをかけられない」「1人1台ずつ支給するのは非現実的」といった事情があるため、BYODを“なんとなく”取り入れているケースが多いのが実情です。
そのまま使うと「思わぬ落とし穴」も
しかし、明確なルールや対策なしにBYODを進めてしまうと、前章で述べたような「ウイルス感染」や「情報漏洩」の危険だけでなく、こんな問題も起こりがちです:
- 私物スマホを使うことに社員が不安を抱く
- 業務とプライベートの区別があいまいになり、ミスが起きやすくなる
- トラブル発生時の責任の所在が不明確
「便利だから使う」だけではなく、「安全に使える仕組み」が必要なのです。
今すぐできる!社員スマホを守る5つのセキュリティ対策
ここからは、ITに詳しくない経営者の方でも実践できる「超かんたんセキュリティ対策」を5つご紹介します。
1. スマホには必ずパスコード(ロック)を設定
まずは「物理的な紛失・盗難」に備えて、最低限ロック画面の設定をしましょう。
理想は顔認証・指紋認証。なければ6桁以上のパスコードでもOKです。
2. ウイルス対策アプリをインストール
スマホにもウイルス対策は必要です。無料でも信頼できるセキュリティアプリ(ノートン、Avast、カスペルスキーなど)を1つ入れておきましょう。
中には、「危険なサイトをブロックする」「不正なアプリを自動検出する」機能が付いているものもあります。
3. 社内クラウドは“2段階認証”を必須に
Google DriveやDropboxなどのクラウドをスマホから使う場合は、必ず2段階認証を設定してください。
たとえIDとパスワードが漏れても、本人確認コードがなければログインできないため、セキュリティは大幅に向上します。
4. アプリの“自動バックアップ”をONに
スマホの故障や紛失に備えて、GoogleやiCloudのバックアップ機能を有効にしておくことで、データ復旧がスムーズになります。
同時に、業務データはなるべく社内クラウドに保存し、端末に依存しない体制にしましょう。
5. “業務専用アプリ”を使う(LINEではなくSlackなど)
プライベートとの混同を避けるため、「業務連絡はChatwork」「資料はGoogle Drive」「予定共有はGoogleカレンダー」など、業務用アプリを明確に決めて使い分けましょう。
LINEは便利ですが、プライベートとの境界があいまいになりやすく、セキュリティ的にはおすすめできません。
社内ルールを整備するには?最低限おさえたい3つの視点
BYODのリスクを下げるには、個々の対策だけでなく会社としての基本ルールを設けておくことが重要です。
1. 業務で使ってよいアプリ・クラウドを定義する
「業務連絡はSlack」「ファイル共有はGoogle Drive」「日報はNotion」など、使用するアプリをあらかじめ決めておきましょう。
これにより、情報がバラバラになるのを防ぎ、アクセス権の管理もしやすくなります。
2. BYOD端末に求める最低限のセキュリティ要件を明記
たとえば以下のように、「使うならこの条件は守ってください」と明文化しておくとトラブルを防げます。
- スマホにロックをかける
- OSは最新にアップデート
- ウイルス対策アプリを導入
- 業務データは社内クラウドに保存
3. トラブル時の連絡・対応フローを整備する
「スマホを紛失した!」「ウイルスに感染したかも?」というとき、どこに・誰に・どう連絡するかを明確にしておくことで、被害を最小限に抑えられます。
専用のGoogleフォームやLINEワークスで報告窓口を作っておくのも効果的です。
社長や管理職も他人事じゃない!「自分もBYODユーザー」
BYODのリスク対策というと、つい「社員のスマホが心配」と考えがちですが、実は最も注意が必要なのは社長や役職者です。
重要情報が集中しがちな経営層のスマホ
経営層のスマホには、以下のような“極めて機密性の高いデータ”が入っていることが多くあります。
- 社内の人事評価や給与情報
- 取引先との契約書・交渉履歴
- 経営戦略や売上データ
この情報が漏れた場合、会社の信用が一瞬で崩壊するリスクがあります。つまり「スマホのセキュリティ対策は経営層から率先して行う」ことが、社内のセキュリティ意識を高める上でも極めて重要なのです。
まとめ|スマホは便利。でも、安心して使える環境づくりを
スマートフォンの普及により、業務の自由度やスピードは大きく向上しました。しかし、便利さの裏には“情報が社外に持ち出されるリスク”が常に存在します。
「社員が自分のスマホで仕事をする」ことは悪いことではありません。大切なのは、それを“安全に運用できる体制”を会社として整えておくことです。
株式会社テクノリレーションズでは、中小企業様向けにBYODのリスク対策や社内ルールの整備支援を行っています。
「うちもそろそろ何か対策を…」と感じた方は、ぜひお気軽にご相談ください。