「いまだにFAXで注文書を送ってるんだけど、そろそろ何とかしたい」「でも取引先がFAXを使ってるから変えられない」──中小企業の経営者から、こうした声をよく耳にします。
FAXはたしかに便利なツールでした。しかし、いまやFAXのために紙を用意し、印刷し、読みづらい文字を確認して…といったアナログな手間が、ビジネスのスピードを大きく下げています。「FAXがあるせいで業務が止まる」という本末転倒な事態にもつながりかねません。
本記事では、FAXからの脱却を考えている中小企業向けに、“最初の一歩”としてできる現実的な方法を解説します。業務のデジタル化は、なにも難しいシステム導入から始める必要はありません。「紙をやめる」「FAXを減らす」という小さな改革が、大きな変化につながります。
なぜ今、FAXをやめるべきなのか?
“便利”が“負担”に変わる時代
FAXが主流だった時代には、PCやメールが普及しておらず、紙のやり取りが当たり前でした。しかし今や、メール・チャット・クラウド共有など、よりスピーディかつ効率的な手段が多数存在しています。
それでもFAXを使い続けると、以下のような問題が発生します。
- 印刷・確認・保管に時間がかかる
- 文字がかすれて読みにくい
- 過去のやりとりを検索できない
- 紙の保管スペースが必要になる
つまりFAXは「情報が蓄積されない」「共有できない」「管理しづらい」非効率な手段になってしまったのです。
加えて、今後はFAX機器の維持費・保守・用紙・インクといった「隠れコスト」がボディブローのように企業を圧迫していきます。実際に、月1万円以上FAX関連コストにかかっている中小企業も多く、これが年単位で積もればかなりの額になります。
セキュリティの面でもリスク
FAXは送信ミスが起きやすく、誤送信による情報漏洩リスクがあります。しかも、送信先を間違えても証跡が残らないため、トラブル時の原因究明が難しいのが現実です。
また、受信したFAXがそのまま放置されていたり、誰でも見られる場所に置かれていたりすることで、社外秘情報が漏れてしまう事例もあります。デジタルツールなら、アクセス制限・ログの記録・誤送信防止など、セキュリティ機能が備わっています。
FAXをやめられない“3つの言い訳”
1.「取引先がFAXを使っているから」
これは多くの中小企業が抱える共通の悩みです。取引先との関係性を崩したくない、だからこちらもFAXを使い続ける──よくわかります。
しかし、取引先の多くも同じように「本当はやめたい」と思っているケースが多く、「先に提案したほうが話が進む」ことも少なくありません。最近では、PDFメール添付やチャットでの送信を歓迎する企業も増えています。
実際、弊社のお客様の中でも「最初に提案してみたらあっさり通った」という例が少なくありません。相手も「自分からは言いにくかった」という本音を持っていたのです。
2.「年配の社員がPC操作に不安を持っている」
FAXは「紙を入れて番号を押すだけ」という手軽さから、PC操作に慣れていない方にとっては安心材料でもあります。
しかし、最近はスマホ感覚で使える簡単なアプリやツールが増え、マニュアルなしでも使えるほどシンプルな操作性が実現しています。研修というより、使いながら慣れてもらうスタイルが効果的です。
とくに、LINEやスマホカメラには慣れている方が多いので、「LINE WORKSで写真を送る」など、身近なツールに置き換えることで、負担なく脱FAXを進められます。
3.「何を使えばいいか分からない」
ツール選定で迷う方は多いですが、まずは“今のFAXの使い道”を整理してみましょう。「注文書のやり取りだけ」「社内への報告書だけ」など用途がわかれば、最適な代替手段を絞り込めます。
たとえば注文書のやり取りなら「Googleフォーム+自動返信」、社内連絡なら「ChatworkやLINE WORKS」、書類のやり取りなら「GoogleドライブやDropbox」などが候補になります。
複雑なシステムは不要です。「いまの業務を“ちょっとラクにする”道具」として考えれば、導入のハードルはぐっと下がります。
最初の一歩は“FAXをスキャンしてメール”からでもOK
「完全デジタル化」を目指さないことがポイント
脱FAXと聞くと、「明日から全部デジタル化しなきゃいけないの?」と構えてしまう方も多いです。
しかし大切なのは、“できるところから少しずつ”始めること。たとえば、FAXで届いた書類をスキャンしてメールやチャットで社内共有するだけでも、紙のやり取りが大幅に減ります。
FAX機器の横にスキャナーを設置し、紙書類をスキャンしてGoogleドライブに保存、そのURLをチャットで共有する──この流れが定着すれば、社内のやり取りから着実に変化が起こります。
社内での情報共有がデジタルに変われば、次第に取引先にも提案しやすくなります。
FAX卒業のステップ|3つの段階で進めよう
- まずは「FAXの現状把握」。何に使っているか洗い出す
- 次に「社内のFAX業務をスキャンやPDF送信に切り替える」
- 最後に「外部とのやりとりもPDFやチャットへ移行」
「一気に変える」のではなく、「段階的に進める」ことで、現場の混乱を防ぎつつスムーズな移行ができます。
「FAXからPDF送信」に変えるだけでも、紙代・インク代・トナー・機器保守のコストが減り、ファイル検索・共有も簡単になります。FAXの処理件数が1日10件あるなら、1件あたり1分短縮できるだけで、月間200分=3時間以上の時間削減です。
おすすめのツール3選(無料から使える)
1. Googleフォーム
注文受付やアンケートなど、定型的な情報収集に最適。スマホでも簡単に入力可能で、自動返信機能もあります。
「FAXでの注文書」から「フォーム入力」に変えることで、誤読や記入漏れも減り、注文データの集計も簡単になります。
2. Chatwork / LINE WORKS
社内連絡や簡単なファイル共有に便利。チャット形式で伝達漏れを防ぎ、スマホ通知で迅速な対応が可能になります。
とくにLINE WORKSは、LINEと見た目がほとんど同じなので、「LINEなら使える」という社員でもすぐに使いこなせるのが強みです。
3. Googleドライブ / Dropbox
見積書・発注書などの共有や保管に最適。クラウド保存で過去のやりとりをすぐ検索でき、ファイル紛失のリスクも低減します。
特定のフォルダにファイルをアップロードするだけで、関係者全員にリアルタイムで反映され、FAXと違って「届いているかどうか分からない」という不安もありません。
まとめ|FAXから一歩抜け出せば、業務効率も変わる
FAXを使い続けることが、もはや“リスク”になりつつある時代。とはいえ、一気にすべてを変えるのは難しいのも事実です。
まずは「社内でのFAX共有をスキャンで代替する」といった小さな一歩から始めましょう。その積み重ねが、社内全体のIT化、ひいては業務効率やコスト削減につながっていきます。
もし迷ったら、まずはFAXで届いた書類をスキャンし、Googleドライブにアップしてみる。それだけで業務がラクになったと実感できるはずです。
株式会社テクノリレーションズでは、FAXからの移行を含めた業務デジタル化のサポートを行っています。「どこから始めればいいかわからない」という方も、お気軽にご相談ください。