「古くなったPC、倉庫にしまってそのまま」「使わなくなったHDD、捨ててもいいよね?」──そんなふうに、社内のIT機器を“何となく処分”していませんか?
実はこれ、情報漏洩の大きなリスクなんです。
中小企業では、IT専門の担当者がいないことも多く、「処分=捨てるだけ」と思い込んでしまいがちです。
でも実際には、廃棄したパソコンやHDDから、お客様の個人情報や社内機密が簡単に抜き取られてしまうケースが後を絶ちません。
この記事では、ITが得意でなくてもできる「安全な処分の基本」を、中小企業経営者の方にもわかりやすくご紹介します。
実際にあった情報漏洩の被害例
「うちはそんな大事な情報なんてないから大丈夫」──そう思っていた中小企業が、処分したパソコンから取引先データを抜き取られ、信頼を失った事例があります。
ある建設業の会社では、古いパソコンを近所の回収業者に「無料で引き取ってもらった」だけで処分しました。ところが、そのパソコンの中には見積書・工事写真・顧客の連絡先といった業務データがそのまま残っていたのです。
結果、その情報がネットオークションに流出してしまい、「顧客の個人情報を軽視している会社」として大きなダメージを受けました。
実際にファイルを“ゴミ箱に入れた”だけ、初期化しただけでは、データは簡単に復元されてしまいます。
「削除」や「初期化」では消えないって本当?
「パソコンのデータ、ちゃんと削除したつもりなんだけど?」という方も多いでしょう。でも実は、次のような操作では完全に消えていません。
- ゴミ箱に入れて削除 → 実際のデータはまだ残っている
- フォーマット(初期化) → 表示されないだけで、データは復元可能
- Windowsのリセット機能 → SSDの場合、完全削除にならないことも
専門の復元ソフトを使えば、誰でも削除されたファイルを“元通り”にできてしまいます。つまり、「削除したから安心」ではなく、「復元できない状態にする」ことが必要なのです。
自分でできる!中古PC・HDDの安全な処分ステップ
「でも業者に頼むのは高そう…」という方に向けて、社内でできるシンプルな処分ステップをご紹介します。
ステップ1:必要なデータは別の場所にバックアップ
外付けHDDやクラウドに重要データを移動しておきましょう。特に「会計」「契約書」「顧客情報」などは要チェックです。
ステップ2:専用ソフトでデータを完全消去
無料でも使える「データ消去ソフト」を使えば、自分で安全に削除できます。
- Windowsの場合:「DiskRefresher」「Eraser」など
- Macの場合:「ディスクユーティリティ」→セキュリティオプション付き消去
「ゼロ書き込み」や「乱数書き込み」など、復元できないよう上書きする機能があるソフトを使いましょう。
ステップ3:物理破壊も1つの手段
HDDやSSDは取り出して、「穴を開ける」「ハンマーで叩く」など物理的に破壊することで、読み取り不可能にできます。
ただし破片が飛ぶ危険もあるため、安全対策をしてから行いましょう。
処分前にやっておくべき3つの確認ポイント
中古PCやHDDを処分する前には、以下の3点を必ず確認しておきましょう。
1. 個人情報が含まれていないか
名簿や履歴書、問い合わせ履歴、LINEやメールのバックアップファイルなどがPCに残っていないかをチェックしましょう。
「一見ふつうのファイル」に個人情報が潜んでいることもあります。検索機能を使って「住所」「電話番号」などのキーワードを探すのも効果的です。
2. クラウドとの同期を切っているか
GoogleドライブやDropboxなどを使っている場合、PCの削除だけではクラウド側のデータが消えない場合があります。
削除前に、クラウドアカウントからログアウト&同期解除しておきましょう。必要があればアカウントの削除も検討を。
3. ログイン情報やパスワードの削除
Webブラウザに保存されたログイン情報(パスワード自動入力)や、アプリの自動ログイン設定などは案外忘れがちです。
ChromeやEdgeなどのブラウザでは「保存されたパスワード」を削除する操作を必ず行いましょう。
処分後に後悔しないための「社内ルール」の作り方
「あの人が勝手に処分しちゃったみたいで…」というような状態では、会社としてのリスクが高まる一方です。
処分時のトラブルを防ぐには、「社内でのルール化」が有効です。
おすすめの最低限ルール
- PCやHDDを廃棄する前に「管理者への申告」を必須にする
- 処分時のチェックリストを作成して書面で記録
- 処分済みの証明書(廃棄証明書など)を保管する
特に中小企業では「紙1枚でもルール化しておく」ことが重要です。
属人的な判断に任せないことで、「うっかり漏洩」のリスクを防ぐことができます。
業者に頼むときの“ここだけは見ておいて”チェック項目
「自分たちでは不安」「安全に処分したいけど方法がわからない」──そんなときは、プロの業者に頼むのも立派な選択肢です。
ただし、業者選びを間違えると「渡しただけで中身が丸ごと抜かれていた」ということも。以下のポイントは必ず確認してください。
1. データ消去の方法を明示しているか?
「消去します」と言っていても、その内容が曖昧な業者は要注意です。
- どんな方式で消去するのか(ソフト消去?物理破壊?)
- どの時点で消去するのか(引取後すぐ?一定保管後?)
上記が明文化されている業者を選びましょう。
2. 「消去証明書」を発行してくれるか?
会社としての証拠を残すには、消去証明書の発行が重要です。以下の項目が記載されているかを確認しましょう:
- 処分対象の機器の型番・シリアル番号
- 消去方法(例:磁気破壊・複数回上書きなど)
- 実施日・業者名・担当者署名
3. 機器を社外に持ち出す際の「追跡手段」
機器を回収して外部で処分する場合、その「搬送中の紛失」リスクもあります。GPS追跡や記録台帳、受け取りサインなど、搬送プロセスの記録があるか確認しましょう。
4. 廃棄処理の流れを説明してくれるか?
「どう処分するのかよくわからない」業者はNGです。
信頼できる業者は、素人でも理解できるように丁寧に説明してくれます。質問への対応や、説明資料の有無もチェックポイントです。
まとめ|古いPCは「捨て方」より「守り方」で選ぶ時代
この記事では、中小企業が抱えがちな「中古パソコンやHDDの処分」にまつわるリスクと、その対策についてわかりやすく解説してきました。
情報漏洩は「外部からの攻撃」だけではありません。社内のちょっとした油断、放置された古い機器──そうした“小さなほころび”から、大きなトラブルにつながるケースが非常に多いのです。
特に中小企業では「誰が何を管理しているのか」が曖昧になりがち。だからこそ、「処分前のチェック」「安全な削除方法」「社内ルールの整備」といった対策が、会社の信用と顧客の安心を守るカギとなります。
処分時のチェックリスト(おさらい)
- 必要なデータのバックアップはとったか?
- データは消しただけでなく「復元できない状態」になっているか?
- 退職者や異動者のアカウント情報は残っていないか?
- クラウドとの連携やログイン情報の削除は行ったか?
- 社内ルールに沿った申請・記録はされているか?
“安全な処分”をIT活用の第一歩に
ITに苦手意識がある方にとって、「パソコンの処分」はつい後回しにしがちな分野です。
しかし、実はこうした“裏側の管理”こそ、業務全体の安全性・効率性を左右する大事な部分です。
「情報を安全に扱う会社」は、それだけで取引先・社員からの信頼を集める企業になります。
テクノリレーションズにご相談ください
「正しい消去ができているかわからない」「そもそも機器がどこにあるか把握できていない」──そんな方もご安心ください。
株式会社テクノリレーションズでは、PCやHDDの棚卸し、処分ルールの設計、社内教育資料の整備まで、中小企業のIT整備をトータルにサポートしています。
まずは1台からでも結構です。「古いパソコンの安全な処分」から、一緒に始めてみませんか?