「電車の中で仕事、してませんか?」公共の場でのPC作業が危険な理由と“今すぐできる”3つの対策

「移動中も仕事を進めたい」「少しでも早く対応しておきたい」──そんな思いから、電車の中でノートPCを開いて仕事をする人が増えています。

しかし、その行動には意外な落とし穴があることをご存じでしょうか? 特に中小企業の経営者や従業員が外出先でPCを開くと、情報漏えいや不正アクセスといった重大なリスクにさらされることがあります。

この記事では、公共の場でPC作業をする際の“見落とされがちな危険”と、今日からできる3つの対策をわかりやすく解説します。

なぜ「電車内作業」は危険なのか?

他人がいる空間でPCを開くこと自体に、さまざまなリスクがあります。特に以下のようなケースが問題になります。

  • 画面がのぞき見られている(「ショルダーハッキング」と呼ばれる手口)
  • キーボード入力が隣の人に見える(IDやパスワードが知られる)
  • Wi-Fi接続先が偽装されている(フリーWi-Fiが偽物で盗聴される)
  • 置き忘れ・盗難による情報流出

例えば、社外秘の書類や顧客リストを開いていたとしましょう。本人にとっては「何気ない作業」でも、周囲の誰かがスマホで撮影していたら──それだけで重大な情報漏えい事故になります。

実際、2023年には関東圏の鉄道内で、通勤中にパソコンでメールを確認していた社員の画面が盗撮され、営業先の機密情報が流出したというニュースが報じられました。撮影者はただの好奇心でSNSにアップしただけでしたが、会社は謝罪・対応に追われ、大きな信用損失につながったのです。

特に中小企業が注意すべき理由

大企業と違い、中小企業では「情報管理マニュアルが未整備」だったり、「個人端末を業務に使っている」ケースも多くあります。そのため、次のようなリスクが高まりやすいのです。

  • セキュリティ対策が個人任せになっている
  • 万が一のトラブル時に、社内で対応できる人がいない
  • 情報漏えいの損害を補償する仕組みがない

つまり「1人のミスが会社全体の信用を失墜させる」可能性があるということ。実際に、名刺管理アプリを開いていた画面が盗撮され、顧客情報が流出したという事例も存在します。

特に士業(法律事務所・税理士事務所など)や医療関連の企業では、個人情報の扱いが厳格に求められます。「ちょっとした外出先での作業」が大きなトラブルにつながることを忘れてはいけません。

“今すぐできる”3つの対策

のぞき見防止フィルターを使う

最も簡単にできるのが、「のぞき見防止フィルター」の装着です。画面の正面以外からの視認性をカットすることで、隣の人から画面が見えない状態を作れます。

家電量販店やネットで2,000〜5,000円程度で購入可能。貼るだけで手軽に始められ、外出先での作業が格段に安心になります。

例えばある税理士事務所では、外回りのスタッフ全員にのぞき見防止フィルターを支給しています。「細かい経費でリスクを回避できるなら安いもの」と所長は話します。

フリーWi-Fiは使わず、テザリングかVPNを活用する

無料のWi-Fiスポットは便利ですが、実は偽物のWi-Fi(なりすまし)も存在します。通信内容を盗み見られる恐れがあるため、業務での使用は避けましょう。

代わりにスマホのテザリングを使うか、VPN(通信を暗号化するサービス)を通じて接続するのがおすすめです。月額1,000円程度のVPNサービスでも、情報漏えいのリスクを大きく下げられます。

公共の場ではパスワード入力や重要情報の操作を避ける

たとえ画面が見えなくても、キーボード操作からIDやパスワードが盗み見られるリスクはゼロではありません。特に銀行口座や顧客情報へのログイン操作は控えましょう。

外出先では「見られても支障のない作業だけ」に限定し、パスワード入力や大事なファイルの編集は社内や自宅に戻ってから行うのが安全です。

社員教育の一環として「外出先でパスワードを入力しない」ルールを定め、マニュアル化している中小企業もあります。ルール化することで社員の判断基準が統一され、ミスが起きにくくなります。

社内ルール化でさらに安心|「移動中の作業はOK?NG?」

社内全体として「移動中のPC利用はどこまでOKか?」をルール化しておくことで、従業員は迷わず行動できます。以下のようなガイドラインが有効です。

  • 作業内容を「閲覧のみ」「簡易編集のみ」などに制限
  • 顧客情報や個人情報の表示・編集は禁止
  • VPN接続を義務化
  • のぞき見防止フィルターの装着を義務化

もし情報漏えいが起きたら?中小企業が取るべき初動対応

どんなに注意していても、100%リスクをゼロにすることはできません。だからこそ、「万が一のときにどう動くか」を決めておくことが重要です。

  • 影響範囲の特定(どのデータが流出したか、誰が関与していたか)
  • 漏えい元の遮断(PCやアカウントの即時停止)
  • 関係者(顧客・取引先)への報告と謝罪
  • 再発防止策の策定と発表

こうしたフローはあらかじめ文書化しておき、社内で周知・訓練を行うことで、「いざという時」でも冷静に対応できます。

情報漏えい保険・サイバー保険の活用も検討を

最近では、中小企業でも加入できる「サイバー保険」や「情報漏えい保険」が増えています。

たとえば、社員がカフェで作業中にPCを盗難され、顧客データが漏えいした──というケースでも、調査費用・損害賠償・謝罪広告費などが保険の対象になることがあります。

  • 「漏えい元が外部」でも補償されるか
  • 自社の業種・規模に対応しているか
  • 実際の事故対応(弁護士紹介や専門窓口)が含まれているか

“備えあれば憂いなし”。万が一に備えて検討しておく価値は十分にあります。

IT担当がいない会社でもできる“外出セキュリティ”教育

中小企業の多くは専任のIT担当者が不在です。だからこそ、外出時の情報リスクについては「誰がやっても分かる」形で教育することが必要です。

  • 月1回の社内ミーティングで「外出時チェックリスト」を共有
  • Googleフォームで「PC持ち出し前セルフチェック」を実施
  • VPN未接続時の警告メッセージを表示するよう設定

こうした取り組みは、難しい知識がなくても導入できます。社員全員のITリテラシーを少しずつ底上げすることが、企業全体のセキュリティ力の強化につながります。

まとめ|“ちょっとした油断”が命取りになる

公共の場でのPC作業は、便利な反面、リスクも多く潜んでいます。特に中小企業では、情報管理の一手間が「信用の分かれ道」になります。

「誰も見てないから大丈夫」「急ぎだから仕方ない」──そんな油断が、取り返しのつかない事故につながるかもしれません。

株式会社テクノリレーションズでは、こうした日常のITリスク対策から、社内のセキュリティ体制づくりまで幅広くサポートしています。PC作業のルールづくりやVPN導入にお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。