ある日、パソコンの画面に突然現れた「あなたのファイルは暗号化されました」の警告文。開こうとしたファイルはすべてロックされ、業務が完全にストップ。これは、いま中小企業を狙うサイバー攻撃「ランサムウェア」による被害の一例です。
「ウチの会社には大事な情報なんてないし、大企業じゃないから関係ないでしょ?」と思っていませんか?実は中小企業こそ狙われやすいのです。この記事では、ランサムウェアの基本から、今すぐできる6つの備えまで、専門知識がなくてもわかるように解説します。
ランサムウェアとは何か?
ランサムウェアとは、「身代金(Ransom)」を要求する「マルウェア(悪意のあるソフトウェア)」の一種です。感染するとパソコンやサーバー内のデータが暗号化され、元に戻すためには金銭(仮想通貨で数十万〜数百万円)を要求されます。
身代金を支払ってもデータが戻る保証はありません。また、警察庁やIPA(情報処理推進機構)も「支払うべきではない」と警告しています。
また最近では「ダブル恐喝」と呼ばれる手法も登場しています。これはデータを暗号化するだけでなく、「データを盗んだ」と脅して公開をちらつかせるものです。個人情報や契約書、社員情報などが対象となることが多く、実際に顧客からの信頼を失い、取引停止となった事例もあります。
中小企業が狙われる理由
ランサムウェアの標的は、セキュリティ対策が不十分な中小企業に集中しています。
理由は次のとおりです:
- セキュリティ専任者がいないため、対策が遅れがち
- 古いパソコンやOSを使っていることが多く、脆弱性を突かれやすい
- 取引先や顧客データなど、実は重要な情報を多数保有している
- 「メールは全部開け」といった慣習が残っており、不審メールに対する警戒が薄い
つまり「小さい会社だから狙われない」は、すでに通用しない時代なのです。
被害に遭うとどうなるのか?
実際にランサムウェアに感染した企業では、以下のようなトラブルが発生します:
- 業務ファイルがすべて開けなくなる
- 社内ネットワークが使えなくなり、営業活動が停止
- 復旧まで数日〜数週間を要し、大きな損失に
- 顧客データの流出による信用失墜
さらに怖いのは、こうしたトラブルは一部の部署だけでなく、経理・営業・総務など、会社全体に波及するという点です。とくに経理部門では、請求書や給与データが使えなくなり、資金繰りにまで影響が出たという事例も報告されています。
今すぐできる6つの備え
「怖い話だな…でも何をすればいいかわからない」という方のために、難しい知識がなくてもすぐに取り組める6つの対策を紹介します。
1. パソコン・ソフトは最新の状態にする
WindowsやMac、各種ソフトウェアは常に最新の状態に保ちましょう。更新プログラム(アップデート)は、セキュリティの穴をふさぐためのものです。「面倒だからあとで」は禁物です。
特にWindows 10以前のOSを使っている場合、サポートが終了している可能性があります。そうした端末は、ネットに繋ぐだけで危険です。OSの更新または買い替えを検討しましょう。
2. ウイルス対策ソフトを必ず導入する
無料のものでなく、法人向けや信頼性のあるウイルス対策ソフトを導入しましょう。リアルタイム監視やファイルの自動スキャンなど、基本機能をきちんと活用することが大切です。
ただインストールするだけでなく、「毎日スキャンする設定」「自動アップデートがONになっているか」などの確認も定期的に行いましょう。多くのソフトはレポート機能があるので、月1回の確認を習慣にしておくと安心です。
3. バックアップを定期的に取る
万が一ファイルが暗号化されても、バックアップがあれば被害を最小限に抑えられます。外付けHDDやクラウドストレージに、重要なデータだけでも定期的に保存しましょう。
ポイントは、「別の場所に」「自動で」保存されていること。たとえば、社内ファイルをDropboxやGoogle Driveと同期し、万一のときはそこから復旧できる体制にしておくと良いでしょう。
4. 不審なメール・添付ファイルは開かない
感染の入口はメールがほとんどです。知らない人からのメールや、件名が「請求書」や「至急」などのものには注意。添付ファイルを開く前に、必ず差出人を確認しましょう。
最近では、日本語が自然で一見気づきにくいメールも多く、「取引先の名前を偽装」「実在する会社名で送信」など巧妙になっています。ファイル名が「.zip」「.exe」「.docm」などの場合は特に注意が必要です。
5. 社内全員に“ルール”を周知する
一人のミスが会社全体に影響します。全社員に「怪しいメールを開かない」「USBメモリの持ち込みはNG」などのルールを周知しましょう。ポスターや掲示物での可視化も効果的です。
また、月1回の簡単なチェックシートや小テストを実施するのもおすすめです。「うちの社員はパソコンに詳しくないから…」ではなく、わかりやすい資料を作ることで、全社的な底上げにつながります。
6. ITの専門家に相談する
自分たちだけで万全の対策をするのは難しいのが現実です。地域のITサポート会社に相談することで、低コストでプロのアドバイスを受けられます。まずは「不安なこと」を一つでも聞いてみるところから始めましょう。
株式会社テクノリレーションズでは、中小企業に特化したセキュリティ診断や運用アドバイスを提供しています。「ランサムウェアが心配だけど、どこから始めればいいか分からない」という方は、まずはお気軽にご相談ください。
まとめ|“明日は我が身”として備えよう
ランサムウェアは「大企業だけの問題」ではありません。実際には、セキュリティが手薄な中小企業が多くの被害を受けています。
一度の感染で、業務停止・売上減・信用失墜と、立て直しが難しい状況に陥ることも。だからこそ「今すぐできる備え」を少しずつでも始めていくことが大切です。
社内のちょっとしたルール作り、パソコンの設定確認、メールの注意喚起——こうした“ひと手間”が、ランサムウェア被害の大きな防波堤になります。
株式会社テクノリレーションズでは、中小企業向けに「かんたん・やさしい」ITセキュリティ対策を提供しています。まずはお気軽にご相談ください。