VPNはもういらない?中小企業が選ぶ“テレワーク時代の安全な接続術”

クラウドサービスが普及する以前は、業務に必要なすべてのファイルやシステムが社内ネットワークに保管されていました。そのため、社外からそれらにアクセスするにはVPNが一般的な手段でした。

しかし、今はGoogle Workspace や Microsoft 365、Dropbox、Box といったクラウド型の業務ツールが主流になり、社内ネットワークに接続しなくても、どこからでも業務ができるようになっています。

たとえば、Googleドライブにファイルを保管すれば、誰でもURLひとつで共有でき、編集やコメントもリアルタイムで可能です。これにより、「社内のネットワークに入る」必要そのものがなくなった会社も増えてきました。

もちろん、VPNが必要なケースもまだ存在しますが、クラウドを前提に業務を設計している会社では、VPNをわざわざ使う必要性は大きく減っているのが現実です。

VPNが必要な会社/不要な会社の違い

VPNの導入を検討する前に、自社がどちらのタイプに当てはまるかを整理することが重要です。

VPNが必要な会社の例

  • 社内のNASに重要なファイルが保存されている
  • オンプレミス(社内設置型)の業務ソフトを使用している
  • ファイルの持ち出しを禁止しており、外部からの接続にVPNで制限をかけている

VPNが不要な会社の例

  • Google Workspace や Dropbox で業務データを管理している
  • スケジュールやチャットもクラウド上で完結している
  • 業務上必要なデータやシステムがインターネット経由で安全に使えるようになっている

つまり、“物理的に社内に行かなければ使えないもの”があるかどうかが判断基準になります。

VPN以外の“安全な接続方法”

「VPNがないと危ないのでは?」と不安に思う方もいますが、今はVPN以外にもさまざまなセキュリティ手段があります。

ゼロトラストという考え方は、すべてのアクセスを“信頼しない”前提でチェックする方式です。つまり「社内だから安全」という思い込みを捨て、毎回ユーザーや端末の正当性を確認することで、社内外を問わず一律にセキュリティを確保します。これにより、VPNに依存せず、柔軟な認証とアクセス制御が可能になります。

また、2段階認証(スマホ通知やワンタイムパスワード)や、IPアドレス制限(社外からのアクセス制御)、ログ管理(誰がいつ何をしたか)などを組み合わせることで、VPNに匹敵する、またはそれ以上のセキュリティを確保できます。

最近では、クラウドサービス側がこれらを標準機能として備えていることも多く、適切な設定と端末管理がされていれば、VPNなしでも安全な業務環境を構築できる時代が現実になってきているのです。

「2種類のVPN」――カフェ用と社内接続用、その違いは?

「VPN」と聞くとひとくくりに考えがちですが、実は用途によって2つのタイプがあります。

1つはパブリックWi-Fi(カフェ・ホテルなど)で安全に通信するためのVPNです。これは第三者による通信の盗聴やなりすましを防ぐために、インターネット上のやり取りを暗号化する役割を担います。

もう1つが、社外から社内のネットワークに接続するためのVPNです。これは、社内サーバーや社内限定アプリケーションを利用するために、仮想的に社内ネットワークと接続する仕組みです。

どちらも「VPN」という名前ですが、守る対象や利用する場面がまったく異なるため、混同しないよう注意が必要です。

外出先やカフェのWi-FiでVPNは有効?

出張中や外回りの営業中、あるいは在宅勤務で一時的にカフェなどのフリーWi-Fiを使うこともあるでしょう。ですが、無料Wi-Fiは盗聴や改ざんのリスクが高いため注意が必要です。

特に暗号化されていないWi-Fiでは、隣の席の誰かが自分の通信を傍受していたということも起こり得ます。そこで、通信を保護するVPNを使うことで、情報漏えいリスクを大幅に軽減できます。

VPNアプリはスマホやノートパソコンでも利用でき、ワンクリックで保護が有効になります。メールやクラウドのログイン、ファイル操作など、業務で使う全ての通信を安全に行う手段として、外出先でのVPN活用は非常に有効です。

ただし、VPNを使っていても、端末そのものがウイルスに感染していれば意味がありません。VPN+端末の基本的なセキュリティ(ウイルス対策・更新・画面ロックなど)をセットで運用することが大切です。

まとめ|VPNは“目的次第”で選ぶ時代

VPNは、社外から社内に安全に接続するための有効な手段ですが、クラウド化が進む今の時代、すべての企業にとって必要とは限りません。

大切なのは、「なぜVPNが必要か」を自社の働き方に合わせて見極めることです。「なんとなく不安だから」ではなく、「何の業務にどんなリスクがあるか」を具体的に把握したうえで、必要なセキュリティ対策を講じることが求められます。

そしてVPNだけに頼らず、クラウドサービスやゼロトラストのような考え方、2段階認証や端末管理など、複数の手段を組み合わせることで、より柔軟で強固なセキュリティ体制を築くことができます。

テレワークやモバイルワークが当たり前となった今、自社の“接続方法”を見直すことは、業務効率だけでなく、会社全体の安全性にも直結します。

「VPNを入れるべきか悩んでいる」「クラウドで業務を進めたいけど不安がある」そんなお悩みがあれば、株式会社テクノリレーションズまでお気軽にご相談ください。

貴社の状況に合わせて、最適な“安全な接続”の形をご提案いたします。