ISMSってウチにも必要?士業こそ知っておくべき情報セキュリティ認証と“今後の信用リスク”

「ISMSって、大企業向けの話でしょ? ウチみたいな士業事務所には関係ないですよ」

もし、あなたがそう思っているなら、少しだけ立ち止まってください。

税理士・弁護士・司法書士・社会保険労務士など、いわゆる士業は、クライアントの個人情報や財務情報、契約書や訴訟資料といった“機密情報の塊”を扱う仕事です。

つまり、守るべき情報資産が最初から非常に多い。だからこそ、「情報セキュリティ対策をきちんとしているか?」が、いまや信頼性の判断材料になっているのです。

ISMSとは何か?

士業にとって避けて通れない「情報管理」の共通ルール

ISMS(Information Security Management System)とは、簡単に言えば「情報セキュリティを企業全体で守るためのマネジメントの仕組み」です。

これは「ウイルス対策ソフトを入れましょう」といった個別の対策ではなく、

  • 情報管理のルールを明文化し
  • 社員全体に周知・教育し
  • 運用状況をチェックし、定期的に見直す

といった“仕組みそのもの”を作ることに意味があります。

なぜ士業にこそISMSが必要なのか?

中小企業でも「第三者に評価されている」という信用が武器になる

士業が扱う情報は、その性質上、漏えいが起きたときのダメージが非常に大きいのが特徴です。

たとえば、顧問先の給与台帳がネットに流出したら? 訴訟資料が誤送信されたら? 信用回復には長い時間とコストがかかります。

ISMSを取得していれば、「うちは情報管理体制を第三者機関に審査・認証されている組織です」と堂々と伝えることができます。これは、同業との差別化にもつながる大きな要素です。

士業の“信用リスク”はここまで変わった

ガイドラインも「セキュリティ体制の構築」を求めている

たとえば、以下のような業界ガイドラインでも、情報セキュリティ体制の整備が明記されています。

  • 日弁連「法律事務所の情報管理に関するガイドライン」
  • 日本税理士会連合会「税理士業務における個人情報保護の手引き」
  • 社会保険労務士会「事務所の個人情報保護指針」

これらはすべて、顧客から預かる情報の守り方、共有方法、退職者のデータ持ち出し対策などについて明確なルール策定を求めています。

つまり、「ISMSまでやらなくても大丈夫」という時代ではないのです。

ISMS取得にはいくらかかる?

費用はかかるが“取らないリスク”の方が高くなる時代へ

ISMS認証の取得には、以下のような費用が発生します。

  • 初期コンサル費用(50万円〜100万円程度)
  • 審査費用(2年間で30〜50万円程度)
  • 運用にかかる人件費

決して安くはありません。しかし、1度の情報漏えいで失う信頼と比べたとき、それは“投資”と考えるべきコストです。

また、税理士・弁護士事務所など、顧問契約が中心のビジネスでは、一度の解約が年間数十万円単位の売上減に直結することも珍しくありません。

士業にありがちな“ISMSの誤解”

「うちは紙中心だから関係ない」「ITに強くないから無理」

ISMS取得にあたり、よく聞かれる誤解は次のとおりです。

  1. 「紙文化だからISMSは必要ない」 → 紙の資料こそ盗難・紛失・火災などのリスクが高い情報資産です。
  2. 「社員が少ないから大丈夫」 → 情報漏えいの9割は人的ミスが原因。小規模事務所こそルールが重要です。
  3. 「ITスキルがないと難しそう」 → ISMSは“管理体制”の話。パソコンの設定だけではありません。

つまり、ISMSは「IT企業」向けではなく、「情報を扱うすべての業種」に関係のあるものです。

ISMSで具体的に何をするのか?

最低限、これだけは押さえたい士業のセキュリティ体制

ISMS認証における主な取組み例を、士業の現場向けに噛み砕いて紹介します。

  1. パソコンやUSBなど端末の持ち出しルール(暗号化、紛失時の対応手順)
  2. 書類や資料の保管・廃棄ルール(施錠保管、シュレッダー処理)
  3. クラウドサービスの使用可否ルール(DropboxやGoogleドライブなど)
  4. 退職者のアカウント削除とデータ回収の手順
  5. 顧問先とのデータのやりとり方法(メール添付NG、共有リンクの有効期限設定)

すべて難しい内容ではありません。大切なのは、これらを“仕組みとして明文化し、継続的に見直す”ことです。

ISMS取得がもたらす「営業面での差別化」

「大丈夫です、うちはISMS取得済です」が新しい安心材料

顧問契約・紹介・入札参加など、信頼が前提となる仕事では、情報セキュリティ体制を第三者に認証されているかどうかが重視される傾向が強まっています。

たとえば、以下のような場面でISMSは差別化になります。

  • 大手企業との顧問契約(情報保護チェックがある)
  • 金融機関との取引
  • 官公庁の業務委託・入札参加
  • 同業者との協業(データ連携時の安心感)

「うちは人数も少ないし小さな事務所だから」という言い訳は、もう通用しません。

まとめ|ISMSを「取得しない理由」はありますか?

士業における情報管理は、いまや「自己判断」ではなく「社会的信頼の基盤」として見られる時代です。

ISMSを取得することで、

  • 情報漏えいの予防
  • クライアントからの信頼性向上
  • 紹介・入札での競争力向上
  • 事務所内部のセキュリティ意識向上

といった効果が期待できます。

もちろん、「どう進めていいかわからない」「コストが不安」という方も多いはずです。

株式会社テクノリレーションズでは、小規模士業事務所に特化したISMS導入支援を行っております。

まずは「うちの業務だと、ISMSってどう対応すべき?」といったご相談からでも構いません。ぜひお気軽にお問い合わせください。