「最近、会社の雰囲気がよくない気がする」「どうも新しい人が長続きしない」──そんな違和感を抱えたまま、何もせず放置していませんか?
中小企業の多くでは、経営者自身が「職場の空気がピリピリしている」と感じながらも、その原因がはっきりしないまま、日々の忙しさに流されてしまいがちです。
その背景にあるのが、“見えにくいハラスメント”です。
ハラスメントと聞くと、暴言や暴力のような激しいものを思い浮かべがちですが、実際にはもっと小さな行動が積み重なって起こります。たとえば、陰での悪口やあだ名呼び、仕事の押しつけや評価の偏りなど。これらは一つひとつでは目立ちませんが、受けた側の心に深くダメージを与えていきます。
しかも、加害者が上司やベテラン社員である場合、被害者は声を上げにくく、結果的に辞めてしまうことも少なくありません。
「空気」で問題を感じ取っていても、「仕組み」で見える化されていない──これこそが、ハラスメントが放置される最大の理由です。
「悪気はない」は通用しない時代
「そんなつもりじゃなかった」「昔はこれが当たり前だった」「冗談のつもりだった」──こういった言い訳が、ハラスメントを覆い隠してしまいます。
たとえば、「君って本当に仕事が遅いよね」や「今日の服、ちょっと変じゃない?」といった一言。言った本人にとっては軽口のつもりでも、言われた側は深く傷つくことがあります。これが何度も繰り返されれば、立派なパワハラやセクハラになる可能性があるのです。
さらに深刻なのは、周囲がその発言を止めないことです。多くの人が“空気を読んで”黙ってしまい、結果的に加害を許す状態が常態化してしまいます。
中小企業では、管理職や古株の社員が“絶対的な存在”になりやすく、注意できる人がいない──この構造こそが、ハラスメントを見えにくくする土壌です。
これもハラスメント?気づきにくい行動パターン
信じがたいかもしれませんが、こんな事例も実際にありました。
ある事業所の業績が下がったとき、本来ならその責任者である上司が現場に出向いて状況を把握すべきところ、自らは動かず、別の手段を選びました。
その上司は、地方から上京したばかりの若手社員を食事に誘い、親切に接することで心理的な距離を縮め、頼みごとを断りにくい関係性を築いたうえで、「ちょっと、あの事業所の様子を見てきてくれないか」と依頼したのです。
上司自身は、その事業所に正面から意見をすることで嫌われることを恐れ、直接的な対話を避けました。その代わりに、信頼を寄せる若手社員を“スパイ”として送り込み、現場の情報を水面下で吸い上げ、密かに人間関係や業務の流れを操作しようとしたのです。
この行為が壊したのは、単なる人間関係ではありません。「上司は正面から向き合ってくれる」「意見があるなら、本人から伝えてくれるはず」──そう信じていた現場の期待を、裏切る形で踏みにじってしまったのです。
さらに、情報を集める役にされた若手社員も、知らず知らずのうちに“信頼を損なう役割”を背負わされてしまいました。現場のメンバーにとっては「裏で話を筒抜けにしていた存在」に映り、本人の意思に関係なく孤立する結果にもつながりかねません。
こうした「表の顔」と「裏の操作」が職場に伝われば、社員同士も「誰を信じていいかわからない」と感じ始めます。疑心暗鬼が生まれた職場では、相談も本音も出なくなり、“声が消えていく”空気が常態化してしまうのです。
このように法律上はハラスメントに該当しなくても、職場環境を悪化させる「グレーゾーン行動」は数多くあります。たとえば:
- 同僚の陰口やあだ名呼び
- 飲み会での下ネタやボディタッチ
- 業務と関係のないプライベートな話をしつこく聞く
- 「あの部署は使えない」などの社内批判
- 断りづらい雰囲気での頼みごとの押しつけ
これらは「いじり」や「親しみ」として行われることも多いため、見過ごされがちです。
しかし、ハラスメントかどうかを決めるのは受け手の感覚です。本人が不快に感じていれば、それは立派な問題行動。気づかないうちに職場全体が“加害者集団”になってしまうリスクもあるのです。
“アットホーム”の落とし穴──ルールがない職場ほど危ない
「うちは家族みたいな職場だから」「少人数で、みんな仲が良いから大丈夫」──そう思っていませんか?
実はその“アットホーム”こそが、ハラスメントを見逃す温床になりがちです。
中小企業では、「空気を読む」ことが大切にされる一方で、明確なルールや相談の仕組みが整っていないことが多くあります。そのため、何か不快なことがあっても、「これくらいで騒ぐのは大げさだ」と我慢してしまう人が増えていきます。
しかも、上司や社長自身が無意識のうちに加害者になっているケースも少なくありません。「ちょっと厳しく言っただけ」「ちゃんと指導しただけ」──そんなつもりでも、受け取る側が萎縮したり、傷ついたりすれば、それはハラスメントになり得るのです。
だからこそ、小さな会社ほど“空気”に頼らず、“仕組み”で人間関係を守る必要があります。
スマホだけでできる!“空気”を“見える化”する3ステップ
ハラスメントの多くは「なんとなく嫌だ」という感覚から始まります。でも、その感覚だけでは対策がとれません。だからこそ、「見える化」が大切です。
次の3つのステップで、職場の“空気”を可視化してみましょう:
- 匿名アンケートを実施する(Googleフォームで「最近困ったこと」などを集める)
- 週に1回、1対1の面談を行う(「今週、気になったことはありましたか?」と尋ねる)
- 月1回の職場満足度チェックをする(「雰囲気」を点数化)
これらは全て無料のITツールででき、操作も簡単。回答をグラフにまとめておけば、雰囲気の変化にすぐ気づけます。
ITツールは“空気を数値化するレンズ”。経営者が直感だけで判断せずに済むよう、客観的な判断材料を提供してくれます。
見逃さないで!数値でわかるハラスメントの兆候
「なんとなく最近、職場がピリピリしてる気がする」──そんな違和感を数字で裏付けできたら、早めの対策が可能になります。
次のような変化が見られたら、職場で何か問題が起きているサインかもしれません:
- 特定の社員だけ残業が増えている
- 1年以内に辞める社員が続いている
- 有給休暇がほとんど取られていない
- アンケートで「雰囲気が良くない」と感じる人が増えてきた
数字と日々の空気を照らし合わせることで、ハラスメントの早期発見が可能になります。
加害者が管理職だったら?社内で解決できない場合の対策
「もしかして、うちの管理職が原因かも?」「でも、相談箱を見てるのがその人だったら…」
こんな状況、現実に少なくありません。そして、放置すれば被害が広がってしまいます。
そのような場合には、以下のような外部の仕組みを導入しましょう:
- 労働局や社労士会が提供する外部のハラスメント相談窓口を社員に共有
- 月額3,000円〜10,000円ほどの通報サービスを導入(第三者が相談を受ける仕組み)
- 社内で「誰にも相談されていない社員」を管理者に任命し、中立性を担保
第三者を介すことで、「社内の空気」ではなく「事実」で判断できるようになります。
また、経営者自身が無意識に加害者になっていないかを確認するために、「社長通信簿」のような外部評価の仕組みを月1回導入するのもおすすめです。
まとめ:職場の“空気”を“仕組み”で守る時代へ
職場の雰囲気や人間関係は、これまで“空気”や“勘”に頼って守られてきました。
しかし今、その“空気”が原因で人が辞める、会社の評判が落ちるという時代です。だからこそ、“空気”ではなく、“見える化された仕組み”で守る必要があるのです。
今日からできること:
- Googleフォームで「匿名相談箱」を作ってみる
- 毎週1回、10分だけでも1対1の面談をしてみる
- 月1回、簡単な「雰囲気チェック」アンケートを回す
たったこれだけでも、職場に大きな変化が生まれます。そして何よりも大切なのは、「聞く姿勢」と「続けること」です。
「このままでは社員が辞めてしまうかもしれない」「人間関係が悪化している気がする」──そんな不安がある方は、ぜひ一度、株式会社テクノリレーションズにご相談ください。
私たちは、中小企業の“空気”を“見える仕組み”に変えるお手伝いをしています。