「スマホで資料を撮って送信」その行動が命取り?中小企業が見落としがちな“私物端末”の情報漏えいリスク

「ちょっとこの資料、スマホで撮って送っておきますね」

そのひとこと、実はとても危険かもしれません。

近年、私物のスマートフォン(BYOD:Bring Your Own Device)を業務に使うケースが増えています。とくに中小企業では「会社用の端末がないから」「急いでいたから」といった理由で、個人のスマホで業務資料を撮影・保存・送信してしまうことが日常化しています。

しかし、この“ちょっとした便利さ”が、情報漏えいや信頼失墜といった大きなリスクにつながるのです。本記事では、私物スマホを使った業務が招く盲点と、すぐにできる対策について、ITが苦手な経営者の方でもわかりやすく解説します。

私物スマホで業務資料を扱うことのリスク

スマホの高性能カメラは便利ですが、業務資料の撮影に使うと次のような問題が発生します:

写真が自動でクラウドにアップロードされる

GoogleフォトやiCloudなど、スマホに搭載されたクラウド連携機能により、撮影した情報が自動的に外部に保存されてしまう場合があります。

誤送信やSNSへの誤投稿

仕事とプライベートが混在するスマホ内で、別の相手に写真を送ってしまう危険があります。

端末の紛失・盗難

スマホそのものを紛失すれば、資料そのものが外部に漏れる可能性があります。とくに機密性の高い顧客情報や契約書類、業務マニュアルの撮影は、意図せぬ漏えいを引き起こす要因になります。

会社で許可されていない“隠れBYOD”の実態と危険性

実際には禁止されているのに、こっそり私物スマホを使っている“隠れBYOD”も多く見られます。会社が明確なルールを出していなかったり、社内のツールが使いにくかったりすると、「バレなければいい」となりがちです。

しかし、そうした行動が情報漏えい事故につながることもあります。「なんとなく」や「自分だけなら大丈夫」という油断が大きな損失を招くリスクを孕んでいます。

スマホで撮影した画像がどこに保存されているか把握できていますか?

スマートフォンの初期設定では、撮影した写真がGoogleフォトやiCloudなどのクラウドに自動保存される場合があります。本人が削除しても、クラウドにはコピーが残っているケースも多く、意図せず外部に保管されていることがあります。

特に企業の機密情報を個人アカウントに保存してしまうことは、情報漏えいだけでなく、内部統制や監査上の問題にも発展します。

実際に起きた“私物スマホ”による情報漏えい事例

営業担当が契約書をスマホで撮影し、個人LINEで送信

スマホの自動保存設定により、個人クラウドにデータがアップされ情報漏えい。

現場作業員が作業報告を撮影し、SNSに誤投稿

背景に取引先の機密情報が映り込んでいた。

退職者のスマホに業務データが残ったまま

回収漏れにより、退職後に取引先から苦情。

これらの事例は、どれも「便利だから」「手軽だから」と始まった行動が発端です。

“撮らない・残さない”が基本ルール

業務資料をスマホで扱わないようにするには、会社として次のようなルールを明文化しておく必要があります:

  • 社内資料・顧客情報は私物スマホで撮影しない
  • 業務連絡は会社支給端末または指定のクラウドツールを使用する
  • やむを得ず使用した場合は、撮影後すぐに削除し、履歴も確認する

こうしたルールを作るだけでなく、日頃からその理由を社員に共有し、「うっかりやってしまった」を防ぐ土台を築くことが大切です。

私物スマホ利用時のセキュリティチェックリスト

  1. スマホ端末にパスコードロック・生体認証が設定されているか
  2. 写真の自動バックアップ設定がオフになっているか
  3. 業務資料を保存した後の削除ルールが明文化されているか
  4. 退職時に私物端末から業務データを削除する仕組みがあるか
  5. 位置情報やGPSのオン・オフに関する基準が明示されているか

代替策:安全な方法で情報をやり取りする

「どうしても写真を撮って共有しなければならない」場面もあるでしょう。その場合は次のような方法を検討してください:

  • 会社が指定するクラウドストレージにアップロードする(例:Google Workspace、Dropbox Businessなど)
  • 共有時にはアクセス制限やダウンロード禁止設定を行う
  • 共有後は速やかに削除し、履歴を管理する

「何を・どこまで・誰が使っているか」を見える化することが、私物端末のリスクを抑える鍵になります。

社内教育で“なぜダメなのか”を伝える工夫

「スマホで撮るのは便利だから」「今までも問題なかったから」と感じている社員に対しては、ルールを押し付けるのではなく、“なぜそれが危険なのか”を伝えることが大切です。

具体的には、実際に発生した情報漏えいの事例や損害額、取引先との信頼関係が崩れた話などを紹介する社内研修が効果的です。また、「責める」のではなく「一緒に守る」というメッセージを持って接することで、社員の行動変容を促しやすくなります。

まとめ|私物スマホの“便利さ”に潜むリスクを正しく理解しよう

スマホの性能向上で「ちょっと撮って送る」が当たり前になった今だからこそ、「本当にそれで大丈夫?」と立ち止まる視点が必要です。

情報漏えいは、紙でもデジタルでも“管理の甘さ”から始まります。スマホが便利な時代だからこそ、あえて使い方に制限を設けることが、企業の信頼と顧客情報を守る第一歩になります。

株式会社テクノリレーションズでは、BYOD対策や情報管理体制の整備など、中小企業のIT安全対策をサポートしています。「うちも対策した方がいいかも…」と思われた方は、ぜひお気軽にご相談ください。